プライド

□かわいくなくちゃいけない理由
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野球ファンから見た岸田守里は、クールだとか冷静沈着とかかっこいいだとかいうイメージだと思う。確かにそれはあながち間違いではない。実際、野球をやっている時やオフもかっこいい。悔しいが男から見てもかっこいいと思う時がある。イケメンな兄の岸田護さんの血を継いでいるからこそ、どことなく目元のパーツが似ていたり中性的な顔だち、シュッとした線、いや、もう言うのはよそう。世間のイメージと俺の前での岸田守里は、めっきり違うのだから。



「まつながさん〜」


「あー、はいはい」



久しぶりに予定が合ったから、千葉でのオススメのご飯屋に連れてって欲しいという守里の要望からご飯に来ているわけだが、当の本人は酔っ払って猫のごとく俺にくっついてくる。普段のこいつからはえらい違いである。



「……守里、もしかしてさあ、久しぶりに飲んだ?」


「……んー、まあ確かに久しぶりに飲んだっていうのもありますけどお、まつながさんに久しぶりに会えたのが嬉しくて」


「……あっそ、」



普段は見せないようなふにゃりとした優しい笑顔を見て、すぐに顔を逸らしてしまった。酔いが回ってなければ目ざとくにやにやしながら「何で今目逸らしたんですか?」って聞いてくるところ、ふにゃふにゃした笑顔で気持ちよさそうにさらに酒をあおる。



「守里、一旦水飲め」


「え、あー、はい」


「全く、これ俺だからいいものの他の選手だったら何されるか分からないけど?」


「そこは大丈夫です…自慢じゃないですがうち、こんなに飲んでも酒には呑まれたことありません。それに、」


「……それに?」


「……こんなことで記憶飛ばしてたらみやにしさんに怒られるし」



みやにしさん。宮西さん。へえ、そうだったのか。もうそろそろ頃合いだし、俺も楽しかったし、多分守里も楽しく酔っているだろうからそろそろ送って行ってやろう。





かわいくなくちゃいけない理由
(次の日、速攻で守里から昨日は迷惑かけましたと謝られたのはまた別の話)
(大丈夫、守里なら迷惑なんて思わないよ)

20190224


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