プライド

□ふゆのにおい
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「……っくしゅ、」



随分可愛らしいくしゃみが聞こえた。隣を見ると、身体を縮こまらせるまもさんがいた。まだまだ暑さが残る8月。寒さはまだない。



「……まもさん?」


「ん、ちょく」


「さっき、くしゃみ……」


「あ、聞こえてた?まだ暑いのにね〜。何だろ。風邪かな」



ティッシュを取り出し、鼻をかむ。鼻の頭が少し赤くなってる。可愛い。



「まもさん、ちょっとこれ着てください」


「え、でもこれちょくのじゃん。悪いよ。しかもまだ風邪って決まったわけじゃないし」


「だって今まもさんアンダーシャツだけじゃないですか。だから少し身体冷えたんじゃないですか?」


「あー。そうかも」


「もし嫌じゃなかったら、僕の上着貸しますよ」



そう言って手に持っていた上着を差し出す。だけど、なかなか受け取ってくれない。きっとまもさんのことだから申し訳ないって思ってるんだろうけど。



「でもこれ借りたらちょく着るものなくなっちゃうけど」


「僕はいいんです。今身体動かしたし汗かいてるし……着るに着れなくて。むしろまもさんが体調崩されたら嫌だから……だからほら、着てください。ね?」


「んー。じゃあ少しだけ借りる。練習終わったら返すね?」



モゾモゾと僕の上着(?)を着始めるまもさん。僕と20cmくらいしかない身長差だけど、やっぱり男女の差が大きいのかもしれない。一回りくらい大きいみたいだ。少しだぼっとしていて、袖も大分余っている。



「……ちょく腕長いんだねぇ」


「そうですか?」


「うちが腕短いのバレちゃうな、」



ふふふ、と笑いながら袖を捲るまもさん。みんな言ってるけど、かっこいい部分もありながら、可愛いところもある。そこがまもさんの魅力だと思う。今?今は可愛い。袖を捲り終えると、やっぱり寒かったのかまた身体を縮こまらせ、首元に口を埋める。



「……わあ、」


「え?」


「え?ああ、ちょくの匂いがするなあって思っただけ」


「……!!!」


「ん?ちょく?」



そういうところがずるいなあって思ってるところですよ、まもさん。





ふゆのにおい

20181008


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