プライド
□天井のひくい家
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怖い。久しぶりにこの感覚を味わった気がする。試合が終わってしばらくしても、ロッカールームから動けずにいた。西武打線が、怖い。
「はぁッ……はッ、……」
「……守里?」
「ッ!!」
急に頭上から声をかけられて反射的に顔を上げる。頭から被っていたタオルがその反動で床に落ちる。それを取る余裕もない。声をかけてきた人は、タオルを取って私の膝に置いてくれる。
「……ツルさん、」
「まだ帰ってなかったの?大丈夫?体調悪い?」
「い、え……大丈夫です」
力なく笑う。強がってもきっと、ツルさんにはなんでもお見通しだと思う。どれだけ強がっても、なんでも言い当てられてしまう。
「大丈夫じゃないでしょ、その顔は」
「…………」
「守里は、ちゃんと投げられてたよ」
「……私も、いい球投げられてるって思ってました。ツルさんが構えたところにも投げれてたし」
「……今年も西武打線は強いな、」
「はい、隙が…ない」
「だけど、守里はいつも通りの仕上がりだよ」
「……どうして、それ、」
「んー、内緒」
「(絶対清水くんとか大野さんに聞いたな)」
「立ち上がりも問題ないと思うし、守里なら今年もきっと大丈夫だよ」
経験のある、信頼してる人に言われると、何だか今以上に頑張れる気がするのだ。
天井のひくい家
20180420