奥村くん

□揺らぐ日常
1ページ/4ページ





悪魔を完全に認知した橘さんは、次の日から普通に過ごしているように見えた

友達と話し、授業を受けて、終われば部活に向かう



いたって何の変哲もない、普通のクラスメイトに見えた






神社の娘だし、そういった類のものへの理解はあるんやろか、と思っていた






「橘さん、最近大会で調子悪いそうですよ」




ある日の祓魔塾の授業終わり、志摩がそんな話を持ってくる

兄貴の方の奥村は橘さんのことをそもそも知らなかったため、子猫丸が説明していた




勝「……そらそうやろ、いきなり悪魔が見えるようになって、祓魔師がいるーとか言われて

理解したように見えても、動揺はあるやろし」

子「慣れろ、と言われても…って感じですよね」

神「それ、今度の神事大丈夫なの?」



意外にも話に混ざってきたのは、神木だった

聞けば神社同士の繋がりで、古い神社出身の橘さんのことは知っているという





神「あの神社、そろそろ神事があるはずよ

橘ひなたはいつもそこで、弓使いの巫女としての役割を担っていたはず

大丈夫なの?」

勝「詳しいな、神木」

神「毎年ニュースとかでも取り上げられる大きい行事だからね

グダグダになって神社の名に泥を塗る、とかにならないと良いけど」



ふ、と意地悪な笑い方をする神木に、勝呂はやれやれと息を吐く




ふと雪男に目を向けると、彼は何かを考え込むような様子が見えた















タァン



一人、道場で黙々と弓を放つ


だがどれも真ん中に命中はせず、ひどいものは的にすら当たっていない




弓を構え、弓の弦に矢を番える

真っ直ぐ的を見ると、先ほどまでは居なかった黒いモヤが的の近くに浮いていた



びく、と指先がぶれる




だめだ、集中しろ、あんなものは無視しろ


そう自分に言い聞かせて、手を離す






だが、矢は虚しく的の中心から外れた








『……はー…』





弓を下ろし、的から目を逸らす


息を大きく吐き出して、俯いた

その時、道場の床が軋む音がして、顔を上げた



.
次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ