奥村くん
□彼女について
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勝呂とともに教室を出る際に、祓魔塾につながる鍵を使って塾の廊下に出る
ここまで来れば、多少混み合った話もできるものだ
「……橘さんのご実家が、由緒ある神社というのはご存知ですか?」
「え?あぁ…、まぁそれなら。俺と似たような環境ですし、その話はよーしてますわ」
「ですよね」
ふ、と奥村先生が小さく笑う
その横顔をちらりと見つつ、話の続きを待った
「……僕がまだ祓魔師になったばかりの頃、彼女のご実家が悪魔に襲われたんです
僕は父と一緒に彼女の家に、救出しに行きました
その時、僕は彼女に助けてもらったんです」
「えっ
………えっ?先生が助けたんじゃなく?」
「驚きますよね」
くすくすと笑う奥村先生の顔を思わず凝視してしまう
この年齢で祓魔塾の講師までこなすエリートを、あの人が助けた?と
「僕はまだ駆け出しで、武器の扱いも今ほど慣れていなくて…
それに一緒に戦っていた父と距離を離されて、少し混乱していたんです
そしたら橘さんが僕を見て、弓でその悪魔って奴は射抜けるのか、って聞いてきて」
「弓で??!!!」
「驚きますよね、ほんと
でも僕も小さかったし混乱していたんで、彼女が持っていた矢に聖水とまじないをかけて、一か八か彼女に悪魔を射抜いてもらったんです
彼女は悪魔の気配は分かるけど見えるわけでは無かったので、僕が狙う場所を言葉で伝えて」
「まじですか……」
「そしたら見事に矢は悪魔を射抜いた、というわけです
まさに破魔矢の如く」
「………………。」
橘ひなたという人物は弓道の特待生で入学した、と言う話は知っていた
だがまさか、悪魔を射抜くとは
「………あれ?けど、それが何で記憶を封じ込めるなんてことになるんです?」
勝呂の疑問に、雪男はしばらく考え込む
というのも、当時は雪男も幼かったため、話の全貌を聞かされていたわけでは無いのだ
だから知っている範囲を、彼女の迷惑にならない程度に話すことにする
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