白百合は強し

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百合と一緒に会場に入ると、複数の視線を感じた

だがそれは自分に向けられたものではない、とすぐに気付いた







「百合」

『何?』



それまではキョロキョロとあたりを見回していた百合が、顔をこちらに向ける


それにすら優越感を得る







『中也?』

「ちょっと耳貸せ」

『?』



不思議そうにする彼女の耳元に顔を寄せる






「腕組め」

『………は?!』

「バカ、耳元ででけぇ声出すな

いいから、俺と腕を組め
じゃねぇとパートナーに見えねーだろ」




中也にそう言われ、ちらりと周りを見る

確かに、男女のペアで来ている二人組は、大抵腕を絡ませていた


今回重要なのは、パーティ客に紛れる事だ

ならば周りと同じようなことをして、空間に馴染む必要がある


そうしないと困るのは中也だ







「ほら」


す、と腕を組みやすいように彼が脇を開ける


おずおずとそこに腕を絡ませると、中也が微かに笑ったような気がした







「ま、こんくらいしときゃァ大丈夫だろ

様になってるぜ」



どこか楽しそうな中也の視線の先を追うと、ガラスに私たちの姿が写っていた

腕を絡ませ、身体を密着させている私たちの姿は、まるで恋人のようだ







『……ま、たまには良いわね』

「!」



ふ、と柔らかく笑った彼女

ガラスに写る笑顔は、いつものクールさよりも、可愛らしさの方が勝っていた


そしてそれは、綺麗なものを目の前にしてはしゃぐ、小さな女の子のようでもあった











***




パーティが始まって数時間

特に変わった事や不審な人物、不審物の情報は報告されていない






「中也くん、少し良いかな」



多くの人に囲まれている首領に呼ばれ、百合のもとから離れる

離れ際に、少し休む、と彼女が言った




『あっちの壁際に行ってる』



そう言って彼女が視線を向けた壁際には、椅子がいくつか置いてあった

おそらく、立ち続けて疲れたパーティ客のための椅子だろう
いくつかは人が腰かけていた


分かった、と返し、首領のもとに向かった









***



「お一人ですか?」



首領と話している中也をぼんやりと見つめながら椅子に座って休んでいると、一人の若い男性が私に声をかけてきた






『いえ、連れがいまして

まぁ、今は席を外しているのですが』


ニコリと愛想良く笑いかけると、その男性も人当たりの良い笑顔を浮かべる


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