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□君の隣に
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朝焼けの中、覚束ない足取りの華奢な体。
蒼白な小さな顔には冷や汗が浮かび、庇うように腰に回した手は細くて。
何度もその場にしゃがみ込んでは、立ち上がってふらふらと歩き出す。
好きでもない男に抱かれていたけれど、きっとまだ、その頃の方が綺麗だった。
汚れきった体は悲鳴を上げて、いつか壊れてしまう気がする。
静かに雨が降りしきっていた日に、最愛の母が自ら命を絶ってしまってから2年。
心にぽっかり空いた穴は、埋まることなく広がっていく。
「先生…」
空を見上げて呟く小さな声。
一瞬夢でも見るように光を宿した瞳から零れ落ちた滴が、静かに頬を伝った。
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