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□Breath
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思わず手にした携帯電話。
以前は一番上にあった番号を、スクロールして探す。
短い沈黙。
流れる自分の歌声。
そして。
プツッという音と共に、歌が途切れた。
「…もしもし、俺だけど」
声はないけれど。
ちゃんと、聞いてるってことは分かるから。
「久しぶりだな」
会話を続けようとして、言葉に詰まる。
思わず溢した息の音が電波を跳ね返って自分の耳に届き。
少しあって、微かに聞こえた。
「……っ」
震えるような、息遣い。
幸せにできなかった。
誰よりも、幸せにしたかったのに。
離れたって、辛くて、苦しくて。
耐えられない夜は。
息遣いだけでも、聞かせてほしい。
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