another T

□Breath
1ページ/19ページ

思わず手にした携帯電話。

以前は一番上にあった番号を、スクロールして探す。

短い沈黙。
流れる自分の歌声。

そして。

プツッという音と共に、歌が途切れた。

「…もしもし、俺だけど」

声はないけれど。
ちゃんと、聞いてるってことは分かるから。

「久しぶりだな」

会話を続けようとして、言葉に詰まる。

思わず溢した息の音が電波を跳ね返って自分の耳に届き。
少しあって、微かに聞こえた。

「……っ」

震えるような、息遣い。


幸せにできなかった。
誰よりも、幸せにしたかったのに。

離れたって、辛くて、苦しくて。

耐えられない夜は。
息遣いだけでも、聞かせてほしい。


.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ