物語

□傍に…
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広い広い海の向こう。

そこに、私たちの故郷がある。
激動の時代の中で、大切な人たちをたくさん失った場所。

そして、私と左之助さんが出会った場所でもある。




「千鶴。
…日の本が恋しいか?」

朝早くに布団を抜け出して、近くの浜辺で海を眺めていた私に、
さっき布団から出てきた時にはぐっすり眠っていたはずの左之助さんが、後ろから私に抱き付いてきた。

「いいえ。
私は、左之助さんさえ居てくだされば何もいりません。」

背中に彼の温もりを感じながら、そう口にする。

「そうか…。なぁ、千鶴。」

「はい。」

「これからも、俺と一緒にいてくれるか?」

「もちろんです。私は、ずっと左之助さんのお傍にいます。」

彼が、あまりにも切ない声で囁くから。
私は彼の逞しい腕にそっと触れて、安心させるように微笑んだ。

「あぁ、俺もお前を離さねぇよ。」

そう言って、優しく微笑んだ彼の顔が近づいてくる。

私は次に訪れるであろうあたたかな感触を予期して、静かに瞼を閉じた。

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