物語

□幸せの欠片
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私の朝は、愛しい人の顔を見て始まる。

激しい戦いを共に生き抜き、私のことをいつも守ってくれた最愛の人。

今日も彼のためにおいしい朝餉を作らなくちゃ。

私の体に巻き付いている彼の腕からそろそろと抜け出して、
勝手場へと向かう。

少し前までは抜け出す前に彼に気づかれてしまっていたけれど、
最近では気づかれることなく起きることができるようになってきた。

手早く朝餉の支度をして、囲炉裏端まで運ぶ。

それから、まだ夢の中にいるであろう彼を起こしに向かう。

「総司さん?
朝ですよ、起きてください。」

そういいながら、優しく彼の身体を揺する。

「うぅ…ん…ちづる…?」

そうすると、彼は眠そうに目を擦りながら、むくりと起き上がる。

それから、とびきりの笑顔で

「おはよう、千鶴。今日も可愛いね。」

と言って私をからかうのだ。

「もうっ、からかわないでください。
朝餉の準備ができてますから、冷めないうちに着替えて来てくださいね?」

そういって、私は赤くなった顔を隠すように部屋を出た。
「はいはい、わかってるよ。
でも、僕はほんとのことを言っただけなんだけどなぁ…」

そんな、総司さんの呟きが聞こえた気がした。






「うん、今日も千鶴のご飯はおいしいね。」

二人で朝餉を食べ始めると、彼は幸せそうな顔で言う。

「ふふっ、よかったです。」

彼は、こんな風にいつも私のことを褒めてくれる。
こんなに甘やかされていていいのだろうかと時々心配になるほどに。

激動の時代を共に生き抜いた私たちは、あの頃には想像もできないくらいに穏やかな日々を送っている。

これからも、この幸せが続くように願わずにはいられない。

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