モノクロの女王と白金

□1. 過去編
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幽霊とか、妖精とか。オカルトなものを信じていた訳ではない━━━そうではないのだ。

ただ、その子達は、産まれた時から当たり前のようにいて、当たり前のように認識していたから。
木からリンゴが落ちるように、ただ最初からあるものだと受け止めて、存在するべきものだと思っていた。

佐々木星彩はただ、安らかに暮らしたい。
星彩は今小学一年生。ぴかぴかの、未来に何の根拠もなく夢を抱ける少女…の筈であった。

「ただいま」

あの事故さえなかったのなら。

「おお、おかえり、星彩」

家に帰って出迎えるのは、母親ではなく、愛するおじいちゃんであった。
玄関先には、おじいちゃんと自分の靴しかない。
母親が忙しい訳でも、父親が仕事に出ているわけでもなかった。
佐々木星彩には両親がいない。
物心ついたときから存在せず、記憶にもない。自分の由緒として、存在“していた”、その程度の存在であった。
両親のことは聞いていた。なんでも交通事故でお空に旅立った、と。まだ幼い星彩に、その意味はよくわかっていなかった。ただ、いない。その事実が全てであった。
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