うみねこのなく頃に

□その選択が狂っているとしても間違ってはいない
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バンッと銃声が聞こえたかと思うと、私の前にいた朱志香姉さんがドサッと倒れる。
その身体から少しづつ少しづつ広がっていく赤い色の液体、それがすぐに血だと嫌でも理解してしまう。
「姉さん・・・・・?」
そっとその身体に触れるとまだ温もりがあり、今から手当をすれば助かるんじゃないかとそんな淡い期待をしたけれど
「もう無理だぜ」
と私にとって聞きたくなかった彼の声がそう言った
その声がした方向を向くとそこには返り血を浴びた戦人さんの姿があった、手には祖父様の愛用していたウィンチェスターライフルを持って・・・。
「もう手当なんかしたって助からないぜ、お前もわかってるだろ?」とにこやかに言う彼に恐怖を覚える
「・・・・な、んで」
涙が零れる、それは大切な家族を目の前で殺された悲しさと彼が犯人だったというショックが合わさったものであるとすぐに分かった。
きっとこの場にいない父さんや母さん達も彼は殺したのだろう、だから返り血がついているんだ
「俺が犯人でそんな悲しいのかよ?涙なんて零してよ」
そう言って戦人さんの手が私の顔に触れる。ぬるっと血の感触が直に伝わり、鉄の匂いが鼻に届く

怖い

このまま私はどうなるのだろう?私も朱志香姉さん達のように殺されるのだろうか?
もしもし、そうだとしたら逃げないと・・・・
「っ・・・・!」
戦人さんの手を振り払ってドアへと走る、せめてこのままなにもせずに殺されるより抵抗して生き延びたいから
あともう少し、もう少しでドアに着くというところで足に違和感が熱い感覚、それと同時にまたライフルの撃たれた音が聞こえた。
「駄目だなぁ・・・全然駄目だぜ?逃げるんならもうちっとタイミングを考えろよ?」
「あっ、ああ・・・・!!」
ドアがもう手を伸ばせば届く距離にあるというのに足が動かない・・・・違う、動けない
自分の太腿から流れる血、少しでも動かそうとすれば激痛が走る。このままでは動けるはずがない・・・私はもう逃げれないのだろう
「さーてと・・・」
コツコツと戦人さんが近づいてきて、そして倒れている私の目の前でしゃがむ
怖いくらいの笑顔を浮かべながら
「もう邪魔者はいない・・・・この島には俺とお前だけしかいない」
「・・・・皆、殺したから・・ですか?」
「ああ」
そう言って戦人さんはまた私の頬に触れる
血は乾いているのかぬるっとした感触はなく、戦人さんの暖かさが直に伝わってくる。
先ほどまでの怖さは不思議と無くなって、今は不謹慎にもこの状況に喜んでしまう自分がいる
今目の前にいるこの人は私の家族も他の親族も殺した人物だというのに、それは分かってる。

それでも・・・・
それでもこの人が私の好きな人ということは変わらない、そう例えこの事件の犯人でも
「戦人さん」
「何だよ・・・・。」
そっと自分の頬に触れている戦人さんの手に自分の手を重ねる
そうすると少し驚いたような反応をした彼に微笑んで私は言う
「大好きですよ」


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