創作小説【短編】
□悲しみを溶かすような優しさを下さい
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あの日、僕にとっての最愛の人がこの世を去りました。
余命3か月だった。
どんなに辛く苦しくても、僕は彼女に笑顔を求めた。
…いけない事ですか?
きっと、それが彼女の重荷になっているとは知らずに。
彼女は弱音一つ言わなかった。
吐き気に襲われ、意識朦朧としていても彼女は笑って何度も繰り返した。
「大丈夫よ。」
彼女がこの世を去って、もう1年が経ちます。
早いですね。
もう彼女の笑顔を思い出せないのです。
彼女の苦しそうな息、青白い顔…。
もう一度、もう一度だけ。
出来るのならば、彼女をこの腕に抱かせて下さい。
出来るのならば、あの寛容過ぎる彼女に抱かれたい。
どうか、この悲しみを彼女の温かい優しさで溶かして下さい。
-END-