拍手(clap)集

□あの子。
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冬あたりからだろうか。

転校してきた、葉次薫(はつぎかおる)は変わっていた。


学校という社会集団組織にいながら、ひとりで時を過ごしていた。


私から見るとかわいそうと同情していまいたいのだが、彼女はそんな事を気にしないとばかりに堂々と日々を過ごしている。


「寂しくないの?」

二人きりになった時、彼女に聞いてみた。


「別に。」


と短い言葉で返される。


「……なんで?」


「前にいた学校で、集団で嫌なことされたから。」


いつもひとり。

全校集会の時も、何かの事情からなのかひとり集団からはずれ、体育館の奥の壁に寄りかかっているのをいつも目にする。


彼女自身、人そのものを拒絶しているようで、当初の雰囲気にしても表情にしても、態度にしても。

人を寄せ付けないようにしていた。


「それは治らないの?」


「頑張って治してる。

けど、しばらくは治らないと思う。」


目もあまり合わせてくれない。

視線が下に向けられ、そこからは強がっている態度と裏腹に゛怖い゛という感情がかすかに伝わる。


「……そうなんだ。」


「一番、この世界で怖いものは人間だね。」


笑っていた。

でも、目は笑っていない。


私はその言葉の意味を知りたかった。

…おわり…
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