Corpse doll

□第一章
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_____時は中世、ロンドンにて。
都心から少し離れた郊外の方にある森のなかにひとつの屋敷がある。
そこには一人の少年とその少年の主が住んでいた。少年の方は何故か少女が着るようなパーティードレスを着ているが、ドレスの色が喪服色という不思議な格好だ。

「…………最近雨ばっかりで嫌になるなぁ。じめじめするし…。」

少年は主の帰りを待つ間、窓辺でひたすらどしゃ降りの雨を眺めながら呟く。彼にとって必要以上の湿気は敵である。己の身が腐食し始めるからだ。
彼____レリウス=アルフレスはフランケンシュタインである。
そもそもフランケンシュタインというのは一番最初にこの怪物を創ったヴィクター・フランケンシュタインの事であるが、後にその怪物自体を指す言葉へと変わっていった。
とは言えレリウスの容姿は怪物とは程遠く、継ぎ接ぎは見えるものの容姿端麗である。フランケンシュタインも改良を重ねられ製法の書かれた禁書さえあれば人間に近いものを作れるようになった。レリウス自身もそのように主によって創られ、ある程度の腐食は抑えられるようになっていた。

___ギィィィィ。
そんな錆びれた音を出す玄関のドアが開き、主の帰還を知らせる。彼は喜びながら玄関へと走る。

「お帰りなさい。マスター…。」
「あぁ、ただいま。外はすごい雨だが…、大丈夫なようだね。」

何処ぞの貴族を連想させるようなドレスに身を包み、可憐な容姿をもった主___カイン・キルレイドは一見立派な女性なのだが昔から同性を、そして生きている人間よりも死体を好む特殊性癖の持ち主である。
彼女の理想の姿をしていたレリウスの亡骸を見たとき、一瞬にして彼の容姿に虜にされたのだ。そして、彼をフランケンシュタインにしたのである。故に彼の身体が腐食しないようにと常に気を使い、女物の洋服を着せている。

「レリウス、新たな服を買ってきたよ。それから…、更に腐食しないようにと強化させる物も。後で改良してあげるな…。」
「……嬉しい。今度の洋服の色は?いつもみたいな色?それとも明るい色の服?」

自身の身体の改良よりも洋服を気にするレリウスは嬉しそうに微笑む。
フランケンシュタインになったときに壊れた彼の人格は性別を持たない。それ故、身体は男の物であっても女扱いされることに違和感を抱かないのだ。

「少しだけ明るい色の含まれた服にした。闇色に身を包むお前も美しいが…
私は明るい色彩に身を包むお前も見てみたくてな…。」

カインはレリウスの頭を撫でながら言う。
撫でられて気持ち良さそうにするレリウスは主である彼女に抱きつく。自分の創みの親であり、主である彼女には常に甘える。彼女の言うことはなんでも実行する代わりに甘えるのだ。
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