暁月
□act.3
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ーーわたし、蜘蛛には入らないよ。
ノアの言葉にクロロを始め団員メンバーは怪訝な表情を浮かべた。
「今、なんて言ったんだ? ノア」
その中でも最も虚をつかれたであろうクロロがゆっくりと聞き直す。
ノアの言葉は少なからず彼を不快にさせたらしい。
「お前は、こいつらに会うのを心待ちにしていただろう。何故だ」
「えーっと、会いたかったのは会いたかったんだけど、蜘蛛に入るか入らないかは別の話でしょ?」
さすがは幻影旅団の団長だ。ただ声のトーンを落として話されるだけで、強い重圧を感じる。
眉を少し寄せる、その仕草だけでも。
「わたしは、蜘蛛の力にはなりたいと思ってる。でも、それって入団するだけが答えじゃないでしょ?」
クロロはノアの言葉の意図を分かりかねるといった様子だ。
心待ちにしていたであろう提案をはねのけられたとあれば、それも仕方のないことではあるが。
「蜘蛛には多分、もっとふさわしい人がいる。だからわたし、別のことで蜘蛛の力になりたいの」
「別のこと、とは?」
静かに紡がれる言葉。
ぴちゃんと、天井から雫が落ちた。
「情報屋をやりたい。ーー巣を張る」