暁月
□act.0
1ページ/2ページ
響き渡る悲鳴。気味の悪い水音。
何の音なのか、初めはわからなかった。長い間閉ざされていた空間に、光が差し込むまでは。
「子供か」
眩しさで目が眩む。悲鳴や建物の崩れる音を背に、長身のその男はただ無機質にそう呟いた。
「だれ……?」
長身の男の隣に、もう1人いる。
「団長。こいつももう殺ていいか?」
嗚呼、殺されるのか。そんなことをぼんやりと思った。
それならそれでいい。
今までも、死んでいたようなものだ。
ーー異端児。
ノアは、クルタ族にとってそういうモノだった。
通常クルタ族の目は碧から緋に変わる。しかし、ノアは違った。ノアの瞳は左が碧、右が緋色のオッドアイ。
ただ、それだけだった。
それだけで、13年もの間陽の光を拝むことができなかった。
「……いいよ。殺して」
せめて1度だけでも、陽の下に出てみたかったが。
まあ、それも運命なのだろう。
おそらくこの連中に滅ぼされるであろうクルタ族にいた、ノアの。