暁月

□act.3
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「情報屋?」


クロロは訝しげにノアを見つめる。

ノアは静かに口角を上げた。


「蜘蛛に恨みを持っている人、狙ってくる人、いっぱいいるでしょ? そういう人のための、網」

「……なるほど。予防線と言うわけか」

「そう」


もしそれがちゃんと機能すれば、今回のようなことを未然に防ぐことができる。ーークロロに、余計な傷を負わせずに済む。


「蜘蛛に入れば顔写真も流れるだろうし、都合悪いんだよね」


クロロを守りたい。
クロロが大切にしている蜘蛛を守りたい。


ノアがクロロの瞳を捉えると、やがて彼は小さく息をついた。


「駄目だと言ってもお前はやるんだろう。好きにしろ」


重圧が引いていく。なんとか切り抜けたようだ。


「ありがとう」


にっこりと笑ってそう言うと、クロロはこちらを一瞥して広間の奥にある段差に腰掛けた。


「ところで、マチ。ヒソカはどうした?」

「え、知らないけど」

「そういや来てねえな」

「入団早々これかよ。舐めてやがんな」


団員たちも同じように重圧から解放されたのだろう。わらわらとクロロの方に集まっていく。

正直腹部が尋常ではないほど痛むから早く目のつかない所に行きたいのだが。

そう思っていると、不意に声が降った。


「情報屋したいなら、ハンターライセンス取った方がいいかもね、ノア」

「ハンターライセンス?」


ノアが隣に立つ声の主ーーシャルナークに視線を向けると、彼もこちらを向いてにっこりと笑った。


「プロハンター試験を合格するともらえるライセンスのことだよ。それがあるだけで金次第で情報集め放題、立ち入り禁止の箇所もほとんど入れるようになるみたい。俺も次のハンター試験受けようと思ってるんだけど、どう? 一緒に来る?」

「ハンター試験、か……」


ハンターライセンス。
確かに取っておいた方が無難か。

情報屋をするのであれば、確かに必要となってくるだろう。

ノアはその蒼緋の目にシャルナークを捉え、にっこりと笑った。

「うん、受ける! シャルナークと一緒なら怖いもんなしだね」

「あはは。シャルでいいよ。じゃあ早速申し込みしよう。わりとぎりぎりなんだよね」

「げ。急ご、急ご。善は急げだ」

「善、じゃあないけどね……」


苦笑いを浮かべるシャルナークに思わずきゅんとする。
シャルナークと数日間を共にする、ということか。
試験に対しては全く不安はないのだが、唯一心配なのは、シャルナークと一緒にいて貧血にならないか(鼻血的な意味で)ということだ。

ちら、と先を歩く彼の横顔を見る。


「……なりそう」

「え?」


とことこと広間を出て行くシャルナークとノアの後ろ姿を、フェイタンは静かに見つめていた。

 
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