「ヘッポコ丸ってさ」
「なに?」




旅の合間の休憩中、木陰で二人並んで寝転んで微睡んでいる最中、天の助がおもむろに話しかけてきた。半分瞼が閉じていたヘッポコ丸だったが、なんとか目を開けて天の助の言葉に耳を傾ける。





いつの間にやら、天の助はヘッポコ丸の方に体を向けていた。天の助にしては珍しく、とても真面目な表情で。滅多に見ないその表情に、何を切り出すつもりなのかとヘッポコ丸は身構える。




「今の生活、後悔してないのか?」
「……え?」




問われた内容の意味が分からず、ヘッポコ丸は思わずポカンとしてしまう。眠気も、どこかに飛んでしまった。




「故郷が襲われなかったり、そもそも毛狩り隊がいなかったら、もっと他にやりたいことあっただろ?」
「…なんで、そんなこと聞くんだ?」
「…前の街でさ」





天の助は言う。以前訪れた街での自由行動中、たくさんの学生達と擦れ違ったことを。みんなみんなお揃いの制服を着て、楽しそうに話しながら歩いていたのだと。手を繋いで仲睦まじく、幸せそうに笑うカップルがいたのだと。ゲームセンターでプリクラを撮って、印刷されたそれを見て嬉しそうにしていた女の子がいたのだと。






そして思ってしまったのだ。本来ならビュティやヘッポコ丸も、あんな風に青春を満喫しているハズなのにと。それなのに妙な因果で二人は戦いの旅に身を投じている。これは本来なら、あってはならないことなんじゃないかと…天の助は、決して優秀ではない頭脳で、そう考えてしまったのだ。




「ああいうのが自然なんだろうなって思ってさ。だから、なんとなく聞いてみたかったんだよ」
「……そんなの、天の助が気にすることじゃないよ」




珍しくテンションが低い天の助の代わりに、ヘッポコ丸は努めて明るくそう言って起き上がった。





「俺は好きでみんなと一緒にいるんだ。学校で学べないことが、旅の中にはたくさんある。学校に行きたかったって思ったことが無いって言ったら嘘になるけど…俺はこの生活に満足してる」
「ヘッポコ丸…」
「それにさ」




無造作に投げ出されていた手をギュッと握って、ヘッポコ丸は笑う。




「もし学校になんか行ってたら、天の助に会うことだって無かったんだよ。そんな青春なら、俺はいらない」
「………」
「………」





沈黙する二人。そんな二人の顔が真っ赤に染まるのはほぼ同時だった。ヘッポコ丸は自分が言ったセリフがどれだけ恥ずかしいものであったか自覚したため。天の助はヘッポコ丸のあまりに真摯で淀みない言葉に当てられたためだ。








自然溢れる木陰の下に赤面する製造歴三十四年のところてんと十六歳の少年…なんともコミカルな絵である。




「え、えと、だから、さ…その…」
「…俺、今ならヘッポコ丸に抱かれてもいい…」
「なんでそうなる!?」
「ヘッポコ丸がイケメンすぎてツライ…」
「やめろ! 悪かった、俺が悪かったから! だから変なこと言うな!」
「ヘッポコ丸ー! 好きだー! 抱いてくれー!」
「やーめーろってばー!」




静止の声も虚しくヘッポコ丸に「抱いて!」などと懇願する天の助。しかし言葉とは裏腹に天の助がヘッポコ丸にのしかかっているので、図としてはいつもと変わらないように見える。寧ろただのじゃれ合いにしか映らない。






案の定、遠くからそんな二人を見ていたボーボボとソフトンは



「元気だなアイツら」
「騒がしすぎる気もするがな」






などと話していたが、二人はそのことを知らない。













これも一つの青春
(でも制服着てるヘッポコ丸見たいなー)
(着ないからな)



わちゃわちゃしてる天屁が書きたかった。後悔はしていない。一時間クオリティ舐めんな(゜д゜)←




栞葉 朱那

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