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□ブラックモア1
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彼が叱られ始め謝るのを第一とし始めたのは変な遊びを覚えてからだ
雨の日は誰も喜ばないのに
喜んで遊びに出かけた
雨の日には外に出て決まった遊びをした
もちろん一人で。
雨粒を硬くできる
雨粒を踏み台にしてまるで空中を渡れる
時には雨粒でカラスにいじめられている子猫を救ったことがある
拾って帰った子猫は両親に叱られ、
いやその前に、雨の日に遊んで来たことで叱られた
謝るのが口癖となったのも叱られた
それを謝るのもまた叱られた
それをまた・・・
いつしか謝らなくなった
その代わり余計なことを話さないように無口になった
雨の日に外へ出かけるのことはやめられなかった
両親も叱ることを諦めたのは、彼の年齢もティーエイジャー後半に差し掛かったからだ
「貴方の傘、とても撥水加工が優れていらっしゃるのね」
大学の中庭で、みんなはもちろん屋内にいるのに、彼とnameだけが傘をさしてわざわざ外にいた
「・・・」
無口を貫き通そうと思ったが、この能力を説明するのも向こうが理解しないだろうし、独り言だと決めつけた
「独り言と思って頂いて構いません」
「いつも雨の日にここにいらっしゃる貴方が不思議でした」
心理学の専攻をとってるのか?とブラックモアは訝しんだ
丁寧語なのに妙に馴れ馴れしい彼女にはいま同じ状況にあるからなのか、あまり嫌気はしなかった
「・・・ブラックモアっていいます、昔から雨の日が好きでしてね」
「その・・・気味悪いことを話すようですが、雨を、こう、ほらね。留め置くこともできるし・・・集められるんです」
「ほらびっくりしたでしょう、すいませェん」
「・・・・・・」
「ええ驚きました・・・その、きっとgift(生まれつきの才能)ですね」
ブラックモアは雨粒を指先でつつき集める
彼の申し訳なさそうな顔で雨を弄ぶ姿はとても愛らしかった
愛らしいのにその中に確かに男の牙が垣間見得る
「申し遅れました、私nameと申します。ここで生物を学んでおります」
彼女は自分のように珍しくこの鉛色の空がにあっていた
普通反比例するものだと思う
こういった表現が似合うのは何か共通点を感じた
「どうして・・・この空の下が似合うんでしょう」
あえて主語を消した
「そうですね、皆必ずしも青い空が、鮮やかな花が似合うとか、当てはまらないと思います。私もその一枠でしょう」
ブラックモアはハッとしてnameの方を向いた
改めて見つめ合う二人は
大して輝いた瞳は持ち合わせていなかった
「貴方も、そうお思いになられたのでしょう」