おはなし 1
□溢れるありがとう。
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「う、うん? 」
よくわからなくてとりあえず頷くと、一瞬だけえりちはきょとんとした表情を見せてすぐに無邪気な笑顔を浮かべた。
「まぁ、毎年のことよね」
えりちがちらりと時計を見て小さく笑う。
そして、今度は正面から抱きしめられた。
「お誕生日おめでとう、希」
あっ!
瞬間、先ほどの言葉が溢れ出して、視界が滲んだ。
「もう一度、言っておこうかしら。……希。私と出会って、見つけてくれて、そばにいてくれてありがとう。ありがとうっ」
ギュッと抱きしめて声を殺して泣く。
それでも小刻みに震えちゃってるから気付かれてるんやろな。
少し離れたところでは賑やかに携帯が鳴る。
誰からなんて確認しなくてもわかる。
「ありがとう、えりち。ありがとうっ! えりち、だーいすきっ! 」
力強く抱きしめると、えりちは無邪気に笑った。
「私も、希だーいすきよ♪ 」
おかあさん。お父さん。
ウチ……。ううん、私。
すごく幸せな誕生日を迎えました。