傘屋

□なにもかもはじめまして
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「お話、とは……?」

「んー、そんなに堅くなくっていいよ?
フレンドリーなの大歓迎!!」

にしし、と子どもみたいに笑う目の前の人に少し戸惑う。

「あ、そうそう。
おねーさんはさ、どうしてこの街にいたわけ?」

「ちょっと人を探してまして。」

「人探しねぇ。
意外とここ入り組んでるとこ多いから大変でしょ?」

「そうでしたね…。
ヒールを履いていたので、大変さ倍増でした。」

ちょっと歩いていればすぐに見つかると浅はかな考えで来てしまった。

ちらりと踵を見ると、だんだんと血が出てきていた。
どれだけ歩いていたんだろう。

「ふはーーーーっ!!
救急箱持ってきたよ!」

襖を勢いよく開けて息を切らしているのは、えっと、十四松さん。(先程誰かがそう言っていたはず。)

「お待たせしましタイムリー。」

消毒液と絆創膏を出して、やるよーなんて言っている。

「ちょっと待って十四松。
多分絆創膏じゃ無理だよ、包帯出して。」

緑色のパーカーを着た人がそう言うと、十四松さんは「わかった!!」と声をあげる。

ケースに包帯止めと共に入れられているから、きっと新品なのだろう。
そんなの使っていいのだろうか。

「え、いいんですか?」

「へーきへーき!!
ほい、足出して〜。」

「まず消毒が先だろ?
最初から包帯巻いても駄目だよ。」

ピンセットでつままれている、たっぷりと消毒液を含んだ脱脂綿を見た途端に、体がこわばった。

あれは、痛い。
絶対そう。
ただでさえじんじんとしているそこに、そんな刺激物を……。

思わず後退りすると、後ろから肩を掴まれた。

にやにやとしている赤いパーカーの人とピンクのパーカーの人。

青いパーカーの人には両手を後ろにされ、更に胴体と足も固定されてどうにもできなくなってしまった。

「や、あの……。」

「おねーさん子どもじゃないんだから。」

「大丈夫だよ。頑張って!」

「む、むりむり絶対痛いっ!」

「諦め悪いぞ。子うさぎちゃん。」

振りほどこうとしてもびくともしない。
ああ、こんな形で男女の差を知るとは…。

「アカチンですか、ヨーチンですか……。」

「マキロンだよ、そんなに染みないし痛くないと思うよ?」

「あぁう……。」

こういう時の痛くないは信用できない。

あれこれ抵抗はしてみたけれど敵う訳もなく、そのまま手当てをされてしまった。

ーーーーーーーーー

「いいいい、痛い。」

「効いてる証拠だって!!」

「鬼だ…。」

「化膿しちゃうよりは良いって。」

「でも、ありがとうございます。」

じんじんと痛む踵を擦りながら、なんとかお礼を口にする。
初対面の人にここまでしてくれるとは、本当にいい人たちだと思う。

「あ。で、人を探しているんだっけ?」

「そうです。」

「名前言ってくれればさ、俺たちもある程度分かるから教えてあげられるよ。」

「ほ、本当ですか?!」
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