夢小説

□妄想随想録 (風間千景)
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〜千鶴Side〜

風間さんが私を迎えに来た日、すぐにでも 出立を促す彼を私は何とか制止した。

ひとまず、お茶を煎れて二人で話し合って みる……。

千鶴 「…えっと、…迎えに来て下さったのは 、嬉しいです……。でも、今直ぐに出立とい う訳にはいきません!」

私は風間さんの目を見ながら、ハッキリと した口調で告げる。

風間 「……解せぬな……。何故、出立を渋る 必要がある……?」

千鶴 「私は、これでも町医者です。今まで 来て下さっていた患者様や、良くして下さ った近所の方々への挨拶も無しに……。そん な無礼な真似は出来ません!」

風間さんと無言のまま見合う事、数秒……。 風間さんは諦めた様に小さく息を零し、口 を開いた……。

風間 「……律儀というか……、強情というか… …、実にお前らしい理由だな。…良いだろう 、そのかわり、三日だ。その間に別れの挨 拶とやらを済ませて置け……。良いな?」

千鶴 「はい!ありがとうございます!」

良かった……、もしかしたら怒って帰ってし まうかもと考えていたけれど、風間さんは 了解してくれた……。

風間 「では……、三日間ここで世話になろう ……。」

千鶴 「///えっ!?ここにですか!?」

つい出てしまった言葉に、風間さんは眉間 にシワを寄せ、私を睨みつけた……。

風間 「当然だ。…それとも、この俺に野宿 でもしろと……?」

千鶴 「い、いいえ!長旅でお疲れですよね ?直ぐに湯の準備をしてきます!」

私は熱くなる頬を見せまいと、急いで蒔き を焼べに向かった。

風間 「フッ、……相変わらず、見飽きぬ女だ ……。」

しばらくして、丁度良い湯加減になり、私 は風間さんを呼びに行った。

千鶴 「風間さん、お待たせしました。湯の 準備が出来ましたよ!私は夕食の準備をし ますので、どうぞ、ごゆっくりと浸かって 下さいね。」

風間さんは、私をじっと見ながら言った…… 。

風間 「なんだ…。一緒に入らぬのか?」

その一言に一気に顔が熱くなる。

千鶴「///なっ、何を言い出すんですか!? 入りませんっ!!///」

風間「クスクス、……冗談だ。本気にするな ……。美味い飯を期待してるからな…。」

千鶴「///もうっ!風間さん、全然変わって ないです!」

私は準備していた替えの浴衣を風間さんに 、ぐっと押し当てた。

風間「フッ、それは……、お互い様のようだ な…。」

そう言いながら浴衣を受け取り、私の頭を ポンと軽く叩くと、部屋を後にした……。

私も、気を引き締め、夕食の準備に取り掛 かる。 遥々、江戸まで迎えに来てくれたのだから 、せめて美味しい物を用意してあげたい…… 。

煮付けを味見している時に、ふと、視線に 気づいた…。

千鶴「あっ、風間さん!上がっていらした のですね。直ぐに出来ますから、居間で待 っていて下さいね。」

でも、風間さんはそこから動こうとしない 。 「あのう……?」と声をかけると、彼は小さ く呟いた……。

風間「……良いものだな……。こうして、お前 が俺の為に料理を作る姿を眺めるというの も……。」

そう言われると照れてしまう……。何よりも 、風間さんがとても優しい瞳をしていたの で、私も自然と笑顔を返していた。

千鶴「クスッ、…湯冷めしてしまいますよ? ……勝手場は冷えます。どうぞ、居間で寛い でいてください……。」

「……あぁ。」と呟き、風間さんは、去って いった。

食事を運び終え、二人で食べはじめる。 私は風間さんの反応が気になって仕方ない… …。

千鶴「…あのう、どうですか?……お口に合 いますか?」

私は黙々と食べる彼に耐え切れず、聞いて みた。

風間「……見ればわかるだろう……。俺は、ま ずいと思った物は一切口にしない……。」

これは……、風間さんなりに褒めてくれてい るのかな……?

千鶴「ありがとうございます!……頑張った 甲斐があります。」

その後、離れていた間にどんな暮らしをし ていたか、風間の里はどんな所なのか、二 人で話込んでいたら、いつの間にか夜は更 けていた……。

つづく
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