夢小説

□夏夜 (斎藤一)
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とある夏の日。

いつもと変わらない朝

いつもと変わらない賑やかな朝餉

平助「あーーーっ!ふざけんなよ新ぱっつ ぁん!」

新八「いいか〜、平助。人生とは弱肉強食 だ!如何なる時も油断しちゃあならねぇっ て事よ!俺はお前の為に涙を飲んで実践し てんだぜ?」

平助「はぁ〜!?そんなのただ、新ぱっつぁ んが食い意地はってるだけだろ!!」

いつもの事ながら平助くんと永倉さんがお かずの取り合いを始め、それを原田さんが呆れ顔で仲裁に入り、それでも騒ぎが収まらずに土方さんの喝が飛ぶというこの光景 。 もちろん、最初のうちは驚いたけれども、 この屯所でお世話になって以来、 毎食の事となると流石に馴れてしまった。

ふと、視線を感じ、その方向に目を向けると斎藤さんと目が合った。でもすぐに逸らされてしまう。

気のせいかな?最近、斎藤さんと目が合っ ては逸らされる。そんな事を繰り返してい ような…。

その日の午後、雑務を終えた私は少し休憩 しようと縁側に足を運んでみた。 まだまだ日差しの強い縁側。暑さを煽るか のように蝉の声が響いている。

(ふぅ、やっぱりまだ暑いなぁ。足だけでも 水浴びしたいけど、前に斎藤さんと沖田さ んに無闇に足を晒すなって注意されてしま っているから駄目だよね…。)

我慢するしかないなと、うなだれていれと、誰かが近づいてきた。

原田「おっ!千鶴じゃねぇか。縁側で休憩 か?」

「あ、原田さん!はい。お掃除などか一通 り終わりましたので。縁側で少し休もうか と思いまして。」

原田「そうか、俺も今、新しく入隊した隊 士たちの稽古をつけ終わったところだ。そ んじゃ、俺も千鶴と一緒に休憩でもするか な。」

そう言うと、原田さんは手ぬぐいで汗を拭 きながら私の隣にドカッと腰掛けた。

原田「まったく…。こうも暑い日が続くと稽古の途中でバテちまう隊士が多くて参っち まうな。」

「そうですね。みなさんしっかり水分補給 を…あっ!」

原田「な、何だ!?急にどうしたんだ千鶴 ?」

「すみません!原田さん、喉渇いてますよね?私ったら、気がつかなく て…。すぐにお茶をお持ちしますね!」

原田「はははっ!そんなの後で自分でやる から気にすんなよ。お前も休憩中だろ?い いから座っとけって!」

でも、と言う私の頭をポンポンと軽く叩きながら、原田さんが思い出したかのように 話し始めた。

原田「そういやぁ、最近,斎藤の様子が少 し変じゃねぇか?元気が無いっつーか、何 か考えて込んでるっつーか…。」

「あ、それ、私も思ってました。近頃よく目が合うんですけど、すぐに逸らされたり、こちらをずっと見ていたので「何かご用 ですか?」と尋ねてみると慌てて「何でもない。」って去ってしまったり…。何だか避 けられているような…。…私、斎藤さんに嫌われているのでしょうか……。」

肩を落としながら話す私の頭を原田さんは クシャクシャと撫でながら小さく笑った。

原田「なるほどな。確かに、そんな態度じゃ避けられてるって思っちまうよな。斎藤の奴 も結構不器用なとこがあるからなぁ。でも まぁ、千鶴の事を嫌ってるって事は無いか ら安心しな!むしろ……いや、これは以上は俺が言うべきじゃねぇな。」

「そう……ですか……。」

原田さんは嫌ってないって言ってくれたけ れども…、じゃあ、なぜ斎藤さんは私にそんな態度をとるのだろう…?

俯いたままの私を見て、原田さんは少し困 ったような笑みで言った。

原田「なぁ千鶴、今晩平介達と飲みに行く んだけどよ、たまには一緒に来ねぇか?」

「えっ!?でも、私お酒飲めませんし!行 ってもお邪魔になるだけじゃ……。」

原田「んなこたぁねぇよ!酒なんて無理に 呑まなくたっていいし、斎藤のヤツも誘う からよ!アイツが何でそんな態度をとるの かを聞くいい機会だろ?」

「あ、確かに。はい!今晩、私もご一緒させてください!原田さん、ありがとうございます!」

私は勢いよく立ち上がり、原田さんに頭を 下げて夕餉の支度へと向かった。

つづく
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