薄桜鬼_短いもの
□言ってみよう!_6 沖田さんの場合
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「ねえ、沖田さん」
「ん? 何かな」
「ここに何をしにいらしたんでしょうか」
楽しそうにしている沖田さんへ冷静な質問を投げてみる。
「んーんと……別に用はないんだよね。今日は非番だし、なんとなく」
ああ、るうちゃんの姿が見えたからってのもあるかな、とも言われましたけど、暇なら土方さんのところへ行ってくれっ、って思っちゃったのが顔に出たようで……
「あ、でも暇だからって土方さんのところにはもうさっき行ったから行かないよ。まあ、僕のことは探してそうな気もしないでもないけど」
『探してそうな気もしなくない』ってことは沖田さんに対して用があるのですよね。
「『探してそうな』ということは、何かまた土方さんに対してやらかした自覚はあるということでしょうか」
「今日は熱でもある? るうちゃん鋭いじゃない」
「それで原因は?」
「別に大したことじゃないよ。置いてあった句集を借りてきただけだからね」
新作もあるみたいだし読みたいでしょ? なんて言葉を紡ぎつつ、懐から冊子を取り出した。表紙には見まごうことなき『豊玉』の文字が……
それにしても自室にこもってる土方さんは完全なひきこもり状態だってのに、いったいどの隙をついてそれを持ち出したのかを聞きたいよ。
「『置いてあった句集』じゃないでしょ!? 探し出してきたんですよね」
「えー、別に家探しなんてしてないよ。いつものところにあったよ」
ぺらぺらとめくりながら、かの有名な一句をそらんじる。
「何度読んでも面白いよね。『一輪咲いても梅は梅』なんてある意味傑作。……あーあ」
急に沖田さんの動きが止まる。