薄桜鬼_短いもの

□言ってみよう!_5 一君の場合
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「本当に綺麗だったんだよ。まるで空気が薄い氷みたいにぴしっと張りつめてて、犯しちゃいけない神域とか聖域みたいだったの。そう! 一君が剣神っていうか神様みたいに神々しい感じって思ったから」

「……そうか」
すいっと横を向かれちゃいました。
だけど気に障ってるわけじゃないらしい。白い襟巻に隠された耳がさっきよりも赤い。
襟巻が白いから余計に映える。目立っちゃってますよ。照れちゃって一君かわいいなぁ。
こうなっちゃうと、さっきまでの『どうしよう』はどこかに隠れてしまいまして、本来の目的を遂行すべく、後ろを向いた首筋へ、耳裏へと悪の手が伸びちゃう。うっふっふ。
悪戯心がうずうずしちゃう。指先でつつつーっとなでてみた。

「っつ!! 何をする!」
一君の背中がびくっと跳ねて、それと同時に、ちょっとうわずった声で怒られちゃった。

立浪の「幸」は一君が刀も竹刀ももっていなかったこと。
一君の「不幸」は切りつけるものが手元に何もなかったこと。

真剣持ってたら居合で真っ二つだったと安易に予想されます。はははっ。

「驚いた?」
とりあえず怒られてることは知らん顔してみよう。
「当たり前だ。何故このようなことをする」

あら。既に平静に戻っちゃってますよ。つまんない。

「だって楽しいもん。一君かわいいし」

「先ほどから『綺麗』だの、『かわいい』だの。アンタは俺に何が言いいたいんだ」

またも赤く染まった耳裏。よきかな、よきかな。
「えへっ。事実を述べてるに過ぎないですよ〜。でも本当はね……」
ちょいちょいって手招きをしつつ距離をつめて……『一緒にいたかっただけ。大好きだから』と耳に囁く。

………………
…………………………
あ、固まっちゃった。

白い襟巻と真っ赤に熟れた一君がかわいくてかわいくて。思わずほっぺにチュッ。
唇にふれる温度がやけどしそうに熱い。

一瞬目があった。

そして

………そのまま一君は卒倒。
ごめん。そんなに予想外の行動には弱かったんだね。以後気をつけます!
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