薄桜鬼_短いもの

□言ってみよう!_4 左之さんの場合
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……あ、でもお題の任務を遂行せねば。名残惜しいんですけど。

左之さんへのすりすりを控え目ながら満喫してから切り出しました。ええ、お仕事に忠実なもので。(←嘘ばっかり)

「あのね。原田さん」
「名前で呼んでくれよ。俺の名前は知ってるよな」
「さ、左之助さん……」
「なんだ?」
「左之助さんはいつもお姉さんたちと一緒にいるけど、あのお姉さんたちにもそう呼ばせてるの?」
「何だやきもちか? そんなことねぇよ。『原田さん』か『原田はん』だろ。それに向こうは愛想を振りまくのも仕事だからな」
「揚屋の姐さんたちじゃなくて、その、市中のお嬢さんたちにも囲まれてたりする……し」
「心配すんな。名前で呼んでほしいのはお前だけだから」

ぎゅうって胸元に抱き込まれちゃった。
寂しげな風情を醸し出したら素敵な特典が付いてくるのもいいものですね。満喫していたいほどの極楽です。
守られてるっていう感触が直球で感じられるとうれしい! このまま流されて職務放棄したい気分ではありますが…。

「あ、あのね左之助さん。聞いてもいい?」
「ん?」
左之さん、鼻にかかった「ん?」は反則ですよぉ。

「いつもお姐さん達も含めて、連れ立っている女の人達と(←複数を強調)何してるの?」
「気になるか?」
「う…うん。新八さんとかは『遊んでる』って言うけど、何してるのかな〜って」

……ごめんなさい、似合わないのはわかってるけど初なふりして。
ナニをしてるか、なんて聞くだけ野暮だってことはわかってるんです。ハイ。
どういう回答されるかだけが気になってるんですよ。えへへ。

「お姐さん達と出かけると白粉のいい匂いがするとか、その匂いが翌日届く文と同じ匂い……なんだよね」

ついでに言えるのは、花街に出かけるときはたいてい翌日の朝帰りで、基本3人(新八さんはもっと早くに戻ってるんだけどね)で土方さんにこってり絞られていることも解ってます。

「なんだよ。るうにそんなこと言われるとはな。あんなの何でもないだろ」
いたずらっ子みたいな視線だけど、その裏に艶っぽいものをチラつかせながら逆にこっちを覗きこまれちゃった。
あらら。こりゃあ初な振りはバレてますな。
さすが百戦錬磨の色男。ではちょっとだけ艶っぽい展開を期待してもいいかな(わくわく。土方さんで味をしめちゃったかも。うふふ)

「……そんな風に言わないでよ。私に関心があるのかもって期待しちゃう……でもみんなに言っているんだよね。ごめん、誤解しちゃった」

哀しげに視線をそらしてみました。ここは一つ涙を流したりしたほうがいいのかな。難しいからこらえて笑顔のほうが有効かも……。
さて、左之さんはどうする?(更にわくわく!)

「………」
あれ? 反応がないよ? 視線をそらしたままだからどんな表情をしてるのか見えないし。どうしたらいいかな。
うーん、うーん。やっぱりここは『無理やり笑顔』を向けるべきか……「きゃっ!!」
見えてないから反応が遅れました。思いっきり抱き込まれてますっ!! 見える範囲では左之さんの引きしまった上腕筋しか見えない。
さらに言えば、私の手は中にコンパクトに折りたたまれて完全にがんじがらめ。それゆえに身動きとれません。
そんな状態でも『うふふっいいにおい』と妄想爆発状態の私って!? いやぁぁん。ドン引きはなしでってお願いしてるじゃないですか。

『もう離さない』って感じで力強く抱きしめられてる。
さっきまでのおバカ妄想は一瞬にして消え失せ、自分の心臓の音がうるさいぐらいにものすごく大きく響いてる。
しかもどんどん速さを増してる。
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