krkの籠球 2

□初恋 【赤司】
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「顔には出さなかったけど、かなり焦っていたんだ。さすがに財布も携帯も所持していなかったから、長時間このままだったらどうしたらいいか、とね」

泣かないだけ偉いと思うけど。

「ある家の角を曲がった時、庭で砂遊びをしていた同じぐらいの少女がいたんだ。彼女は一目僕をみるなり『こっち』と手を引いて、縁側に座らせてくれて自分用のおやつとおしぼりを僕に差し出してくれたんだ。自分がお腹を鳴らせていたのにね」

警戒心の強い征十郎を呼びつけるとはなかなかの強者かもだわ。

「時間にして30分も歩いていたわけではないと思うんだが、どうやら気疲れをしていたらしく僕はお茶を飲みながら涙を流して泣いたんだ」

征十郎が人前で泣くことがあるの!? びっくりして思わず顔を見上げてしまった。

「そんなに驚かなくてもいいじゃないか。そうしたらね、その子が『私が一緒にいてあげるから大丈夫だよ』って優しく抱きしめてくれたんだよ」
「優しくしてくれたんだね」

「そう。しかも彼女自身も留守番をしていたらしくて家に入れない状態だったんだよ。おやつもそこにある分だけしかないのに、全部僕に差し出してくれてね」
「親切にしてくれた彼女は征十郎の恩人でもあるんだね。でもその話と私と何か関係があるの?」

うん。心温まるストーリーだけど私との関連性がわからない。

「ふふ。るうとの関係は大アリだよ。その時の女の子はるうなんだから」
「へ?」

記憶をかなりたどって、たどって……ずいぶんと昔のこととはいえ、記憶にありませんが。

「覚えてないんだよね。君はその直後に軽い交通事故で一部の記憶が抜けているらしいから」
「なんでそのことを知ってるの、よ」

確かに私は5才の時に自転車との接触事故に会った。その事故の前後1か月ぐらいの記憶だけがあいまいだし、トラウマなのか自転車に乗れない。
別に運動神経が悪い訳じゃないし、一輪車には乗れるのに不思議よね。

「僕を誰だと思っているんだい? 恩人についての調査をしただけだよ」

普通はしないですよね。そんな調査は。
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