krkの籠球 2

□季節は関係あるのか? 【誠凛バスケ部】
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「で、黒子。秋がなんだって?」

何事もなかったかのように木吉が黒子に話をふった。

「いえ。誠凛祭がそろそろですね、と思っただけなんです」

誠凛の学園祭は11月の第2 土・日開催となっている。

「ああそうだな。お前らのクラスの出し物は決まってんのか?」
「確かメイド喫茶だったんじゃねぇか……です」

あいかわらず敬語のできない男、火神の脳内では怪しい日本語講座が開講されている。

「ダァホ。飲食店は希望が多いから漏れるかもしんねぇな。もう少し奇をてらってねぇと書類で落ちっぞ」
「それっマジなんっスか?」

思わず身を乗り出す火神。

「同内容の場合は学年が上のほうからの申請が有利なんだとよ。部単位でも2年申請だったら負けっしな」
「そうだったんですか。実はもう一つ候補があったんですが……『火神くんと大食い対決』です」
「マジかよ!? ってか、無理だろうが」
「はい。予算の都合はもちらろんですが、どう考えても勝てる人がいないんでボツになりました」

「火神は食うからな」
「食わねぇとハラ減るじゃねぇか……です」
「それ以前にお前の食う量がハンパねぇんだ、ダァホ」

以前、4キロのステーキを時間内に食べたら無料という店に連れて行かれたときの火神の完食した量を思い出して日向は眉間をひきつらせていた。

「ま、ウチはフリースロー対決と練習試合になるんだろうから、火神がそんなイベントに引きずられていってたらカントクの笑顔が怖そうだ」
「そうっすね。鬼カントクに変身されたら身が持たない……デス」

誠凛バスケ部のカントクは2年の相田リコが勤めており、彼女のにっこり笑顔に続く一言は全部員の背筋を凍らせるに十分な破壊力をもっている。
当然、部員らに拒否権はない。

「クラスも大事だが、部活の出し物にも協力してくれよ」
「ウッス!」

と、話がまとまったとき、部室の扉が『バーン!!』と勢いよく開いた。

「「「「うわっッ!!!! 」」」」

4人が揃って驚声をあげて振り返ると、そこに仁王立ちしていたのはカントク『相田リコ』その人だった。

「ちょっと、いつまでチンタラ着替えしてんのよ! このかよわい女子をこの秋空に一人帰らせようって気じゃないでしょうね」

普段はそんなことを言わないが、どうやら今日は一人で帰るのが嫌なようで、同じ路線の日向、木吉の両名を待っていたらしい。

「あら、日向君。そんなところに新作の武将? あ、そうだいいこと考えた。今年の学祭のフリースロー対決は日向君がスリーで対決して、負けるごとに一体逝ってもらうってのはどう?」

口調こそ軽やかではあるが、日向は背筋にいやーな汗が流れるのを感じ、「そ、そうだな」と、抗えない力に屈するような回答しかできなかった。

「鉄平と火神くんはそうねぇ……1on1のデモ5戦で負けたほうが練習3倍? うーん5倍?」 
「お、おい。リコそれは厳しい……」

すでにリコは聞いていない。

「黒子くんは……うーん。ミスディレで障壁の役をしてもらおうかな。一般の参加者に黒子くんが抜かれたら外周10追加よ♪」
「えっ……」


いきなりの理不尽な発言に一同茫然としてしまった。

「だって、『鬼カントク』ですもの。その名にふさわしくなるように頑張るわね」

オーッホッホッホと高らかに笑いつつ「あと5分で昇降口よ」と言い残して去って行った。
残されたのは茫然と後姿を見守る着替え途中の男子4名。

「聞こえてたんだな」
「そのようッスね」

盛大な4人分のため息が秋の空に吸い込まれていった。

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「どの季節であっても『カントク』はいつも『カントク』で安心します」
「って和んでんじゃねぇ!」
「いやいやブレのない怖さだな」
「俺の宗麟と三成の運命はどうなるんだー!」
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