薄桜鬼_長いもの

□残念なのか?そうかもしれない_土方 その2 【完結】
1ページ/4ページ


トシの彼女として市民権(?)を獲得した私の日常は過ぎていく。やっかみ視線が増えたけど、トシの一睨みで被害を受けるような何かに発展することはなさそう。
まあずっと仲良かったし、一緒にいること多かったから周囲の友達も特に普通だったのも良かったのかな。

「あのさ」
「なんだよ」
「なんで私を好きになってくれたの?」
「何だろうな。そんなこと考えて好きになるわけじゃねぇからな」

そうだよね。そうなんだけどさ、女子的にはそう言われるのって微妙な感じ。
きっと、っていうか絶対に眉間にシワよせて『うーーーっ』って顔してたんだろうな。ちょっとこめかみあたりの筋肉が痛くなった。

「そんな顔すんな。そうだな…ガキのときに思ったのは『頼りがいのあるところ』、『本当は泣き虫なのに人前では我慢してくれるところ』、『面倒見のいいところ』だな。あとはそうだな『がんばり屋なところ』か?」
「『頼りがい』って、クロからガードしたことじゃないの?」
「まあそうだな。本当は自分だって怖くて震えてンのに、俺を怖がらせないために虚勢はってただろ」
「知ってたの?」
まさか気づいていたとは思ってなかった。犬は好きだけど、近所のクロは雑種だったけど大型の犬で吠える声も大きくて怖かったんだよね。

「俺はお前がいれば安心だと思ってたんだが、ある日クロの前を通るとき繋いでる手が少し震えてるのに気付いた。怖いのに頑張ってくれてたんだな」
『ありがとな』って頭をぽんぽんとされた。これだけなのに心がぽかぽかする私って単純すぎない?

「それだけじゃねぇぞ。俺がやべぇなって思ってるときにだって何も聞かずに『大丈夫!どんと行こうよ』ってかまえてるお前が頼もしくてな。気持ち的にも『頼れる』存在なんだ…って恥ずかしいこと言わせんな!」

トシの頬に朱がさす。
この冷静沈着なイケメンにこんなことを言わせる私って悪い女だな。なんてちょっぴり優越感に浸っていたら、とんでもない球が飛んできた。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ