薄桜鬼_長いもの

□残念なのか?そうかもしれない_土方 その1 【完結】
1ページ/4ページ

今、私の目の前にいる幼馴染のトシ、土方歳三は近隣のちょっとした有名人。

こんな古風な名前なのに、顔は細面の美形、背も高くて体は細マッチョ。正直、超有名な男性タレント事務所のアイドルなんかよりイケメンだと思う。
そのビジュアルゆえ、どこから調べたのか誕生日には他校の女子生徒が校内に入ろうと画策して新八先生や島田先生が交通整理することになったり、近所の街角には不自然にうろうろする女の子たちが後を絶たない。

町内会の井上会長が家でお茶飲んでるときに「駅前の町内会事務所に道を聞きに来る女の子が多いから、『トシくん地図』とか作ろうかなんて話があがってるんだよ」って言われた。
エスカレートして家までの標識とかも作りそうだったから、代わりにきっちり断っておいたけどね。

本気で民族移動になりそうだから絶対にやめてくださいよ。
交通渋滞とかで人手がなくて泣くのは会長さんですよ?
ホント、『すごいひと』なんだよね。


「………ふぅ」
お行儀悪く机の上に顎をのせたままトシに視線を送りつつため息をついた。

「どうした?」
眉間にしわをよせながら視線に対しての問いかけ。
「トシ。また眉間にしわよってる」
そう指摘してあげるとあわてて鞄の中の目薬を探す。
トシがよく眉間にしわを寄せるのは怒ってるからでも、ガンつけでもない。単に目が悪いから目つきが悪いだけ。酷使しすぎるとしわが寄るんだよね。

「で、どうしたんだ」
目薬さして瞼をしぱしぱさせながらもう一度聞かれた。だけど、どこからどういう風に言うべきかを悩んでしまったから黙ってしまった。

「さっきから俺の顔を見てるが、何かついてるのか?」
「……目と鼻と口がついてる、かな」
さっきと同じ体制のまま適当すぎる答えを口にした。あうぅ。このまま話すと顎が机にガンガン当たるから頭に振動が響く。

「……なんだそりゃ。誰にでもあるモンじゃねぇか。本当は?」
一歩間を詰められた。近くなった分視線だけでトシの顔を見上げるのが結構苦痛になってきた。黙っていたらもっと詰め寄られてしまって、視線だけじゃもう見上げ切れない。めんどくさくなってきて視線を下におとしてつぶやく。

「……ズルイ……なって」
「はあ?」
「ビジュアル良しだけでもうらやましいのに、体型も運動神経も良しじゃん」
ヤバい、愚痴モードになってきた。口をつぐまねばー!!

「そうか?」
肯定するでもなく、否定するわけでもなくトシが『そんなことがいいたかったのか』的な表情のままこっちを見た。
そこは否定か謙遜するところじゃないわけ? 
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ