krkの籠球

□不足してます_人事を尽くしても【緑間】
1ページ/1ページ

『クラスにいるちょっと変わった人』といえば、『緑間くん』と答える人が少なくとも過半数を占める。

その理由は
・いつもテーピングをしている
・なんだかよくわからないアイテムを所持していることが多い
・口調が変だ。語尾に『なのだよ』って何?
・いつも飲み物がお汁粉だ
・高尾くん運転の変な乗り物(おそらくリヤチャリ)の荷台に座ってる。リヤカーと自転車をどうやって、いつ誰が合体させたのよ

というように他者からは「もしかしたら痛い人なのかもしれない」という疑惑に満ちた視線を独り占めしているわけで。

ただ、彼の場合は
・とんでもなく優秀(学年一位)で、質問すると先生よりもわかりやすく説明してくれる
・バスケ(特にシュート)は神業だ。どこからでも決めてくる
・彼のピアノは絶品。音楽の先生が涙したという逸話がある
・美形。ぶっきらぼうだけど意外と世話好き

という利がある。
しかし、その利は羨望すぎて『人を遠避ける』効果はあるが、寄ってくるという効果がない。

「という訳で真太郎は少し『変わった人』から脱する努力をしたほうが良いと思う」

クラスで唯一俺を怖がらない立浪るうが、俺の席の真ん前に座り込み、人を指さしながら言う。
手にはご丁寧にクイズ番組のようにデータを張り付けたフリップを持っている。

「ねえるうちゃん。これわざわざ作っての?」
「そうよぉ。夜中に黙々と作ったの。努力は報われているかな、高尾君」
「確かに、これだけ見ると真ちゃんてば『ヘンな人』だよね」

違いない、と二人でケラケラと笑っている。

「お前たちは俺に何をさせたいのだ。俺は人事を尽くしているにすぎん。それをあえて湾曲して人に迎合しようとは思ってはいないのだよ」

「それだよぉ。その『俺は自分の意思をまげん!』っていうスタンスがきついんじゃない? もしかしたら、人事を尽くしているつもりでも、その頑なさで逃してる部分もあるかもよ」
「なっ!!」

おもわず言葉を失った。人事を尽くしているはずが、天命をはねのけているだと? ラッキーアイテムで完全に補正しているのだ。そんな訳があるはずがない。
……いや待て。一昨日のラッキーアイテムは入手困難だったため半日非携帯だった。あれが良くなかったのか……。

そのようなことを考え始めるときりがなく、答えが導き出されるわけでもないのに顎に指を置いてぐるぐると悩み初めてしまった。
視界の端で高尾とるうがひそひそと話し始めたが、さほど大切な話をしているわけではないようなので放っておく。


「おーい、真ちゃーん。そろそろ戻っておいでよ」

るうに制服の裾を引かれて我に返った。
視界の先にはるうのみ。高尾の姿が見当たらない。

「高尾は?」
「とうの昔に逃げちゃったよ」
「そうか」

「しっかし真ちゃんはやっぱり独特な視点で動いてるよね。よもや芸術」

またもけらけらと笑われた。

「るう」
「なに?」
「笑いすぎなのだよ」
「いいじゃない。笑う門には福来る、でしょ」

それは間違いではない。

「るう」
「だから何?」

「俺は気づいてしまったのだよ」
「何に?」


「俺は人事を尽くしている。確かに俺の行動は頑なで、天命を退けている可能性もなくはない」
「ほうほう」

「だが、クラスメイトに避けられていても問題はない。要はるう、お前さえこちらを向いてくれれば天命を得たこと思うのだよ」
「へ?」



「バカモノ。俺はお前を振り向かせ続けるために人事を尽くしていると言っているのだよ。お前に選ばれなければ意味はないのだよ」





-------------------------------
勢いで告白しちゃった!!!!!

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ