krkの籠球
□不足してます_心配症だとでも何とでも!【黄瀬】
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それはある日の部活の帰り道。
いつものように先輩たちと交差点で分かれて帰路についている。
「るうっち」
「なあに?」
「そんなトコ歩いていると危ないッスよ」
『そんなトコ』とは道路脇にある高さ30cmほどで幅3cmぐらいの植え込みとの境にある棒の上。この上を歩くのって、綱渡りみたいで昔から好きなんだよね。
小さいころに近所の公園でよくやったアレです。ちょっと違うのは『継続的に』やっているということ。決して過去形ではないのデス。
それから、この遊びには独自ルールを設定してあって、『人の手を借りたら成功とは認められない』『落ちたらやり直し』『コーナー(角)での休憩時に一時降り可』というよくわからないものがある。
「大丈夫だよ。長年のキャリアをなめちゃいけません。うぉっと」
「危ないッス!」
横から伸ばされた涼太の手を振り切って、なんとかバランスを保とうと思った。
一瞬バランスを崩して棒から降りちゃった。あーあ。あと3歩ぐらいで角だったのに。
「涼太が声をかけるからバランス崩しちゃったじゃん!」
ちぇーっ、という顔になっちゃったまま口で涼太に八つ当たりして振り返った……ら、目が合った瞬間にぎゅっと抱きしめられた。
「ちょ、涼太!?」
反論なんて聞かないよ、って感じでさらにぎゅーっと締められる。あうっ、ちょっと苦しいかも。
「りょ、た。苦しいから少し離してよぉ」
「だめッスよ」
ため息交じりだけど、嬉しそうな声音を含んで否定された。
「危ないッス。俺の大事なるうっちにケガでもされた俺の心臓が止まっちゃうかもしれないッス。だから危ないことしないように捕まえておくッスよ。……それに、さっきまで先輩と一緒だったから触れられなくて、俺、るう不足っす。充電させて」