krkの籠球

□図書館ではお静かに【火神】
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初めまして。私、立浪るうと申します。
高校生になって初めての夏休みですが、受験を経て入学しているため、多少の学力余力があったことと、新設校なのでまだ進学校というレベルでもないため、1年の一学期は比較的のんびりと過ごしていました。
ですが、さすがに夏休み明けの二学期からは勉強に本腰を入れるためか、夏休みの宿題は意外にも多くてちょっと嫌になっていました。

いやいやながらも宿題の山に手をつけようとしたけれど、どうも自宅では誘惑が多くて脱線してしまいがち。
(おまけに母親からは「クーラー使い過ぎ」だの「家にいるなら庭の草取りと水やりもして」などいろいろと邪魔が入りますしね。)

かといって、友達の家で一緒に宿題をしようものなら、こちらも誘惑が多くて1ページ足りとて進まないなんてことが。
(それにね、「今日は彼氏とデートだから♪」なんてこともしばしば。友情と彼氏を秤にかけられて連敗中です。)

なので、極力脱線できず、避暑もできて、親から文句も言われず、おまけにお金がかからない場所である図書館へ、宿題を小脇に抱えてLet's Go!

*****

私の利用できる図書館は2つ。

一つは公立の図書館。徒歩10分。
ここは書庫フロアと勉強フロアが別に設定されているので、勉強せざるを得ない環境に自分を追い込むことができる。
受験期には散々お世話になった場所。ただ問題は、築30年の建築物で数年後には改装を予定しているぐらいなのでクーラーの効きが芳しくない。
たまに「クーラー故障」という恐ろしい札が提示されていたりする。(あの札を見たときは、一瞬だけ冷凍庫レベルで涼しくなる。本当に一瞬だけね)

もう一つは自分の学校の図書館。自転車で15分。
昨年開校されたばかりの新設校なので設備がとにかく新しい。学校側も気前がよくて、平日に限りだけど在校生に開放されているので、自由に利用することができる。運が良ければ先生に質問したり、誰かに聞けるのが利点。当然クーラー完備。
但し利用には制服着用で登校することを条件にしている。


距離と気温、利用条件を考えたけど、どう考えても学校の図書館を利用することがよさそうだと判断した私は、暑さにもまけず制服を着用した。
これが利用パス替わりなんだから仕方がないよ、と自分に言い訳しつつ家を出る。

******

下り坂が多いので暑い日差しでも少しは風を受けながら学校へ到着することができた。
できるだけ図書館に近い駐輪場に停め、急ぎ足で館内へ足を踏み入れる。ほどよく効いたクーラーに『ふはーっ』と息をはく。

馴染みの司書さんに挨拶をして利用ボードに記入。そこには同じクラスの火神君の名前があってドキッとした。
ちょっと怒ったように乱暴な字だけど、これは彼の通常。元気が有り余っているかのような字をいつも書いてる。

背の高ーい赤毛の彼は私の好きな人。
入学早々にプリントで指を切ってしまった私に絆創膏をくれたのが縁で、最初によく話をするようになって、いつの間にか好きになってた。
だけど、もし断られでもしたら友達としても気まずくなりそうで告白なんてする勇気がなくて……。

今日も学校の図書館なら、運が良ければバスケ部の練習をちょこっとのぞけるかも、なんて下心もあったんだよね。
いつも部活で忙しそうだけど、今日は練習ないのかな? それとも練習の合間にカントク率いる頭脳集団に強制講習されてるのかな。

とりあえず、入館時間からするとまだ館内にいそうだから、挨拶だけでもしよう。
そう考えるだけでもほころぶ口元を抑えられず、何となく急ぎ足になってしまいながら図書館内を「席探し」のふりをして駆け抜けた。
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