krkの籠球

□大ちゃんとしゅくだいーん 【青峰】
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『どこにいても目立つ』と言われるこの肌の色が唯一目立たなくなる時期、それは夏休みだ!

オレは水着の跡なんかまったくない状態での真っ黒だけどな。
それを田舎のじいちゃんは「大輝はよく焦げとるのぉ。都会の子とは思えんわ」と言う。
オレは焼きすぎの焼き魚じゃねぇ! と反論したらばあちゃんと二人、屋根が吹っ飛ぶぐらい大笑いしてた。

学校のプールに行って、ストバスクラブ行って、じいちゃんとばあちゃんに会いに行ったりしてると夏休みってやつはすぐに逃げようとしやがる。
オレはまだまだ遊びたりねぇのに、いつの間にか8月の終わりになっててさつきが『大ちゃん、宿題終わってないでしょ』って、遊ぶ代わりに毎日ドリルをやらされる羽目になる。

オレを悩ませる怪人の名はしゅくだいーんという。
こいつを倒すにはいろんな人の協力が必要だ。

毎日の天気は母ちゃんがネットで調べてくれた。
観察記録をつけなきゃいけなかったらしい朝顔は学校に忘れてきた。プールのついでに見にいったら、とんでもなくでっかいタネがいっぱいついてた。
さつきが『大ちゃんのすごーい! 誰もこんなになってないと思う!』ってものすごくほめてくれた。
とりあえず、途中の花とかはさつきのやつを写して適当に花の絵をかいておいた。

こんなにオレは頑張って怪人しゅくだいーんと闘ってるのに、コイツのHPはちっとも減らねぇ。
途中で回復魔法とか使ってんじゃねぇか? って思うぐらいなんだ。

明日が始業式でこのしゅくだいーんを倒した証拠を先生に渡さないといけないのに、まだ倒しきれていない。すっげえ悔しい。

「大ちゃん、来たよー」

夜、さつきが家にやってきた。夕方帰ったのにどうしたんだ?

「どうしたさつき。忘れモンかよ」
「まーね。はい、大ちゃんお誕生日おめでとう」

ニコニコ笑いながら水色のビニール袋に青いリボンのついたものを差し出した。
そうか、今日はオレの誕生日じゃねぇか。

「ありがとな」
言葉少なに手を伸ばして受け取って、ガサガサと広げて中身を確認する。

「すっげぇ! 新しいやつじゃん!」

中身はオレの一番気に入っているメーカーの最新バッシュだった。
さっそく試し履き。うん、やっぱり足に吸い付く感じがする。こいつなら今よりももっと高く飛べるようになりそうだ。

「さつき、サンキューな!」
「そんなに喜んでくれて私もうれしい。色はどうかな」
「いい感じだな。カッコイイ」
「やった!」

ホクホク顔のオレの背後にある机を見て、さつきの顔色が微妙に変わった。

「大ちゃん、まさかまだ終わってない……の?」

そのまさかだ。
あと算数ドリルの応用問題がどうしても終わらねぇ。こいつはちゃんとマルをつけてもらって提出しないといけないらしく、もう3回も直してるのにマルがつかない。
母ちゃんが説明してくれるって言ったが、オレはそれを断った。

「俺が自分で怪人しゅくだいーんを倒すんだから母ちゃんの助けはいらねぇ」
「しゅくだいーん? そういう名前なの?」
「そうだ。結構つぇえけど、こいつは俺が倒す」
「面白そう! 私も協力させて!」
「仕方ねぇな。まあさつきならいいだろ。やるぞ」
「うん!」

さつきが参加してからは早かった。あいつの弱点をさつきは知ってたらしく、途中の小トラップなんかにかかることなく強攻撃で粉砕した。
無事、母ちゃんにマルをつけてもらい、オレは勇者さつきの力を借りてしゅくだいーんをやっつけることに成功したのだった。

やっぱりオレは強い!
でもこれはやっぱり勇者さつきの力と、新作防具バッシュのおかげかもしんねな。

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宿題は計画的に。

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