krkの籠球

□どこまでもエスコートします!?
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「るうっちー」
「あれ? 涼太。さっきはいなかったけど仕事だったの?」

名前を呼ばれて顔を上げると、廊下から大型犬と見まごうほどのご機嫌モードで黄瀬亮太が飛び込んできた。
「そうなんっス。せっかくるうっちのクラスと合同体育だったのに……」
「人気者の証拠でしょ。ほら、お仕事は?」
「やらせていただけるだけで光栄です! っスよね」
「そうそう。仕事がないよりある。それだけで十分でしょ」
「だけど、やっぱりつまんなかったっス。上手くいけば半分は参加できたのに」

黄色い…ゴールデンかラブラドールあたりだな。あれが耳をたれてシュンとしてるみたい。思わずよしよしってしちゃうよね。

「まあまあ。じゃあ生徒会からのフライング速報で元気になるかな? 今年の球技大会は通常のクラス対抗ではなく、隣接クラスとの合併対抗。種目はバスケ、バレー、ソフトと全員参加のドッジだって」
「ってことは! 一緒のチームなんスね」
「その通り。それに各種目とも対象部活の部員を男女とも1名まで参加させて良し。だって。涼太はバスケで出てね。私はソフトに出るから」
「頑張るっス。でも同じ種目じゃないんスか?」
「ふっふっふ。だって例年男子と女子だと体育館別じゃない。しかも同じような時間帯だから応援にいかれないよ。ということで、入手してきたタイムテーブルがこちら。この時間分けならどっちも応援いかれるっしょ」

じゃじゃん、と効果音をつけて雑に書き込みのあるコピーを広げる。

「るうっち、いつも思うんスけどどこからこんな情報を持ってくるんスか?」
「『情報屋立浪』ですから。出所は企業秘密。だけど信頼できる筋だからね」

そう。私は情報通というか、良いにおいを追っていくと、そこに耳よりな情報がある。発達した野生のカンみたいなものかな。楽しそうな情報って本当に『甘いにおい』がするんだよ。

「それで、多忙なモデルさんは午後から1限だけ出勤で、バスケの練習のために学校来たの?」
「そのつもりだったんスけど、今日は急遽練習が休みになったんスよ。んで、欠席分として1時間の補習があるんスけど、ダッシュして半分の時間で終わらせるんで、ちょっとだけ待ってて欲しいっス」
「ん、わかった。私は調べものがあるから図書館にいるよ。終わったら来る?」
「行くッス!」

元気のよいお返事。やっぱり大型犬の「ワン!」に近い?

***

しかし補習である以上、そう時間短縮はならないだろうと図書室でのんびりと小説を読み始めた私に、30分後『お待たせっス!』と図書館に不釣合いな元気ヴォイス全開で涼太がやってきた。

「ちょっと、本当に半分の時間で切り上げてきたの?」
「もちろんッス! 先生も『理解できてると判断できる90点とれたら帰してやる』って言ったッスからね。有言実行ッスよ」

そう。こう見えても頭の回転が良いらしく、努力なしにそこそこの点数をとる。いつ勉強しているのかはわからないけど、学年20位以内にちゃっかり名を連ねている。

「いつも感心するよ。いつ勉強してるの?」
「え?特に何もしてないッス。試験の前に教科書読むぐらいっスよ」

コピー能力の高いヤツは勉強もコピーで十分てか? ナマイキ!

「今日の頑張りは完了したッスから、ここからは楽しい時間っすね! 今日は俺が全部エスコートするっス。次の3つからコースを選ぶッスよ。1)俺の部屋 2)展望台 3)るうの部屋。コースが違っても、内容はあんま変わんないっスから心配しないでほしいっスよ」

「……どう考えても1と3はシチュが同じだよね。そのうえで『内容はあんま変わんない』って、なに考えてんのよっ!このエロ犬は!」

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キュ〜ン。きゃいんん

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