krkの籠球

□よびかた
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「えーっと。昼食後の休憩はわかるけど、食べてすぐ寝るとウシになっちゃうよ、大輝さん」

「『大輝さん』なんてのんびりした呼び方してんじゃねーよ」
「えっと、じゃあ『青峰っち』?」
「黄瀬と同じ呼び方すんな」
「『大ちゃん』?」
「それじゃさつきだ」
「そんなこと言ったって、『青峰くん』『大輝』『青ちん』『青峰』ってどれも誰かの呼び方じゃない。かぶらない呼び方ないよぉ」

私、立浪るうは困ってます。彼氏であるバスケ部のエース青峰大輝と一緒に屋上ランチをしたあと、足の間に抱え込まれてそのままごろり。という体勢になっています。ようやく上半身を起こしたら、エース様も上半身を起こしたので、膝に乗っけられている体勢から抜け出すことができません。

いつの間にか『彼女は「青峰大樹」をどのように呼べばよいか』が話題です。というか指令です。
それにしても、多種多様な呼ばれ方をしているので私のオリジナルが見つかりません。

「俺の彼女なら、お前だけの呼び方があるだろうが。思いつくまでこのままだな」
「そんなこと言ったってぇ」

膝の上で抱っこ……。二人きりのお部屋ならいいけど、が、学校でなんて、誰かに見られたらって考えたら顔から火が出そう。
のがれるためにジタバタするけど、逞しく鍛えた体相手に効果なし。

今日は試験最終日なので、昼食後から久しぶりの部活。マネの私は選手よりも先に体育館に行きたいところですが、羽交い絞めに近いと身動きがとれないです。

「アオミネ様。そろそろ部活の時間なのでハナシテクダサイ」
「その呼び方ちげーだろ」

しかも棒読み! とケラケラ笑われた。

「じゃあ、大好きなエース様」
「そんな風に毎回呼ばねぇよな」

ギブです。
はああ。もう時間前集合は難しいです。とりあえずさつきちゃんにメールを送ろう。ぽちっと。

「あぁ? なんだよ今の送信内容。『捕縛失敗。遅れます』って。俺は猛獣か?」 

まあ物理的にその揶揄は間違っていないです。っていうか、よく『捕縛』読めたな。そっちが感心。
そんなことを思いつつ、すこーし逃げ腰になったのは本能ですね。

「何で逃げンだよ」
「いや、何となく?」

再度がっしりと腕に引き込まれてしまいました。脱出不可能な捕縛体勢。


「さて、お前はまだ『課題』が終わってねぇからこの腕からは出らんねぇよ」
「そ、そうは言われても今日は試験後の初練習ですって! 今吉先輩に怒られちゃいますよぉ」

とりあえず『腹黒眼鏡』と名高い今吉先輩の名前を出してみる。少しは効果が……

「今吉サン? ああ、さっき廊下で会ったときに気が乗ったら行くって言っておいたわ。
 練習の時間だから離せ? やなこった。今日はこのままだって決めたろ。聞いてない奴にはおしおきだ」

羽交い絞め状態のままキス。だんだん深くなるキスで理性が保てません……。

***

わざわざ呼び名を作る必要なんてねぇ。お前がこっち見て笑えば何考えてっかわかんだからよ。

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青ちんが「捕縛」と読めたのはやはり「得意分野のDVDや雑誌」のおかげなんでしょうか。

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