薄桜鬼_短いもの

□一言で言い表せません_2 目を離しません
1ページ/3ページ

山崎くんと女主は観察方でお仕事をしています。
今回の任務では女主はおとり役の潜入捜査です。

********************************

「じゃあ打ち合わせ通りに。私はお座敷で情報収集を主にしてるから丸腰同然なんで、護衛のほうは手を抜かないでね」
「こちらが無能であるかのような言い方はしないでください。きちんと護衛しますよ」
「そうよね。大丈夫なはずなんだけど、なんか今回は嫌な予感がするのよ」
「では貴女も気を引き締めて任務にあたってください」
「はいはーい」
「『はい』は一回でけっこう」
「はーい」

妙に軽いやりとりで今夜の任務についての打ち合わせを行う。潜入捜査となるため、女であるるうが太夫に扮して宴席に同席して情報を聞き出し、山崎は天井裏で護衛兼その他の情報収集をする手筈となっている。

任務とはいえ、恋仲である彼女が他の男に媚を売るような行動をすることに対して、内心は腸が煮えくりかえるほどの嫉妬を感じているのだが、当の本人はいたって気楽に構えているので拍子抜けしてしまう。

「いいですか。いつも言っていますが『危険な真似はしない』『必要以上に接近しない』『間違っても閨に連れ込まれない』これは守ってください」

一つ一つ、指を折りながら任務中の約束事とでもいうのだろうか。山崎自身の不安を招くようなことをしでかしてくれないための内容を口にする。

「烝くんは心配性だなぁ。一番目と三番目は絶対にないけど、二番目は状況に応じてじゃないの?」
「いいえ。貴女はちょっと目を離すと全部実行しようとしますから。決して過剰なことは言っていません」

『返事は?』と言われて、とりあえず『は〜い』と間の抜けた返事を返しておく。
それを聞いて彼は大きくため息をつく。気苦労が絶えない人だねぇ、なんて思うけど口にはしない。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ