薄桜鬼_短いもの

□想定してみよう!_2 言いたい?言われたい?
1ページ/3ページ

掃き掃除をしていたら「そのような掃き方では埃が舞うばかりです」と言って私から箒を取り上げた男がいます。
同僚とも言えないことはないので文句の一つも言って奪い返そうかと思いましたが、監察方の行動上は私の上司なのでちょっと我慢しておきましょう。
土方さんのもう一匹の犬、烝くんです。

箒を取られてしまったので掃除ができません。それを『仕事を取り上げられた』ととるのか、『何も言わないのに仕事を代わってくれた』ととるのか。
私は断然後者ですが、それにかまけてサボろうとか、別のことをしようとか考えると怒声がとんできます。
烝くんのお説教は地味に長いのでできるだけ避けたいシロモノです。嫌なお説教は『山南さん』『土方さん』『山崎くん』の順です。

「君は自分の仕事を人にとられて恥ずかしくはないのか」
「いや、そう言われましても箒を取り上げて自分で仕事を進めてるのは烝くんじゃないの」
「もう一本ぐらいあるだろう。それを使えばいいじゃないか」
「そういうなら烝くんが持ってくればいいじゃん」
「見かねてしまったのだから仕方ないだろ。それに、『烝くん』と呼ぶのはやめてくれないか」
「なんで〜? 烝くんは烝くんじゃない」
「す、少なくとも隊務のときは君の上司だ」

あ、そこで上司風ふかしちゃう? 私はあくまで協力者なだけなんだけどな。
逆に冷ややかな目で見ちゃうよ。

そんな私の視線に気づいたのか烝くんは視線を私に向ける。微動だにする気配なしです。

じーーーーーーーーーーーーーっ。

お互いが目をそらさない。
野生の生き物だだったら、先に均衡を崩したほうが負けだもんね。よーし、負けないぞ。

じーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ

だめだ。
いつまでも「待て」のできる犬にかなうわけない。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ