krkの籠球 連載

□妊婦日記 【実渕の妻】
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今日は結婚記念日。
いつもは多忙なダーリンも『フリー勤務』という名の休暇状態。
8時を回って、気温も上がってきたけどせっかくの休暇だからもう少し静かに寝かせてあげなくちゃとは思うけど、ついつい寝室をのぞいちゃう。

お天気も気候もいいからどっかにお出かけしたいな〜とは思うのだけど、普段が超多忙なダンナさまの玲央ちゃんは未だ夢の中にいる模様。
宗教画のように美しい寝顔を乱すことなんてできない私。

こんなに綺麗で優しい玲央ちゃんだけど、普段は社長室長として辣腕をふるっている。
その仕事っぷりは流れるように美しく無駄がない。

「あら、できるだけスマートに仕事をしたほうが手間も少なくてすむでしょ?」
って言っていた。

同じ会社に勤めていたから彼の噂はとてもよく耳に届いていたもの。
綺麗な外見でスマートな仕事ぷりはもちろん、3年前に赤司征十郎様が次期社長に就任されたとき、子会社の一社員に過ぎなかった彼が社長室長に抜擢された。赤司社長は学生のころから信頼している社員とはいえ、一社員にすぎなかった彼に対する風当たりは相当に厳しかったとは思うけど、彼は風雅な態度でその風をことごとく受け流していて、あれよあれよという間に障害はなくなっていった。
派手な立ち回りをするでなく、社長の威光をひけらかすでもなく、実力で黙らせていく姿は正直、すごいとしか思えなかったわ。

それから、この綺麗な外見で『スマートな仕事』をする人だから、さぞかし私生活もストイックなんだろうけど、『まったく想像もつかないほど。さすがは夢の王子様。アイドル以上に私生活は謎だよね』って給湯室で話してたら、本人が「そうでもないわよ」って参加してきて心臓が口から飛び出そうになるほどびっくりしたわ。

本人としては、『たまたま通りかかったら』ってキレイに笑ってくれたからよかったけど、不快に感じられてたら絶対にクビだったんだろうな、と思う。

存在自体が幻なのかもしれないと思っていたぐらいだから、よもやこの人と交際はおろか、夫婦になるなんて思ってみたことはなかった。
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