krkの籠球 連載

□猫を拾う7.5【赤司視点】
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自宅で誰かと食事をする機会はほとんどない。
まあ、自宅で食事をすることもほとんどないのだからさして問題視するようなことはないが。

だから彼女の動きを逐一確認していたのかもしれない。

食事にしよう、と食べ始めたときからかぐやの動きは硬くぎこちなかった。
箸から何度も里芋が逃げ出したり、茶碗を持つ手が震えていたり行動がせわしなかった。

不思議なことにそれを不快に思うことなどなく、逆に楽しい演出のように感じていたよ。

ただ、ある瞬間に彼女の動きが止まった。

袖口を凝視して固まっている。
なんだ? 袖口に何かあるのだろうか。

近づいて袖口を確認してみると、何のことはない。湯豆腐の醤油がはねただけだ。

服なんてそんなものを汚したって何てことはないのだが、その一点を凝視しているということは、それをかなり気にしているのだろうか。

「どうしたんだい? ああ、服なんていくら汚しても問題ない」

あえてそう声をかける。
実際問題として俺は服が汚れようと何も気にしないからね。
でもどうやら途方にくれているようだ。

「気になるのかい? じゃあこうしておけば大丈夫かい?」

汚れが一点だから気になるのだろう? 汚れが修復不可能なまでに広範囲にあればどういう対応をするのかな?
ちょっとした悪戯心さ。
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