krkの籠球 連載
□猫を拾う7
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「どうしようか。汚れてしまったね」
「ど、ど、どうしようか? じゃないでっしょぉ!?」
ガウンの袖口にかなりの面積で黒いシミをつけて平静を装いつつ、うれしそうにしている彼に対して、つい動揺して金切り声に近い音を発してしまった。
「こらこら。少し声を抑えてくれないかい? 高音にはあまり親しみがないんだ」
先ほどと同じように平然とした顔でそんなことを言う。
確かにヒステリックな女性の声に慣れてはいないだろうけど、そのすました顔は『面白がっている』風でしかないとしか見て取れない。
「えっと、赤司…さん」
「征十郎だよかぐや。征服する、の征の字を書くんだ」
そう呼べってこと? しかし『征服する』なんて偉そうな名前をつけたわよね。
名付け親は『万物を支配せよ』とでもいう意味でつけたのかしら。まあ、名前っていうのは大きな希望を込めてつけるわけだから無理はないだろうけど、どこの時代の下克上を狙う王?って感じ?
「ふっ。俺はすべてにおいて正しいし、すべてを制するべく生を受けたわけだからね。『支配者たれ』という意味の名をつけられたという点はあながち間違っていないよ。ちなみに名づけ親は祖父だ」
!!!
私なにも口にしてないわよね?
びっくり再びです。超能力者でしょうか。
「かぐやが考えてることは全部顔に書いてあるって言っただろ?」
確かにそう言われましたけど、その行動に心臓が持ちませんよ。
「だ、だからって私の心を音読しないでくださいっ」
「それは約束できないな。だって面白いからね。まあ、努力はしておこう」
くすくすと笑う口元でそんなことを言われても信憑性はゼロですね。
また驚かされるんだろうな、と考えている間に食事を片付けることができた。