krkの籠球 連載

□猫を拾う5【赤司 猫side】
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ふわふわと雲のように空を漂う夢を見ていた。
雲に乗ったことはないけれど、風に流れる雲を見ては『乗ったら気持ちよさそうだな』と考えたことはある。

コロンと寝返りを打ったときにお日様のような香りが鼻をくすぐったことも空を漂う夢になっていた原因の一つかもしれない。
ものすごく良い香りと肌触りのものに包まれているようだ。

……? 包まれている?

朦朧とする意識を必死に覚醒させ、頑張って頑張ってようやっと薄く目が開いた。

最初に目に映ったのは白っぽいシーツ? すごくフワフワしてる。
そしてさっき夢の中で鼻をくすぐった香りがした。気持ちいい……じゃないって! どこよココ!

びっくりして一気に目が覚めた。
寝ていた場所はゆったりとしたサイズの上品な造りのベットで、シーツの肌触りも上等だった。

そのままぐるりと見回すと白っぽいレースのカーテンがかけられた大きな窓が見えた。
まだ窓の外は雨が降っているらしく、時折窓ガラスに雨跡がつけられる。


少なくとも私の知っている場所ではない。
残念なことに、こんな上品でセレブ感あふれる環境にはこれまで縁があったためしがないから。

自分の置かれている環境を理解するためにも、とりあえず記憶を反芻する。

家は……新しい相棒ができたからって追い出された……間違ってないと思う。

天気は……今確認したよりも少し強く降っていたと思う。

それで追い出された私は『冗談だよ』ってまた家に入れてもらえると思ってドアの前で待ってたけど、もう私のためには開かないって思ったから雨の中を歩き出したんだっけ。
本当は強情張ってドアの前にいるのをやめたら追いかけてきてくれるんじゃないかって思ったのよ。
追いかけてなんてくれなかったけど。

それで……えっと……どうしたんだっけ。
うーんと……確かきれいな赤い……えっと……


うんうんと頭を抱えていたら
カチャ、とドアが開いて記憶の中の『赤』が現れた。
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