krkの籠球 2
□好きすぎるんだ。どうしたらいいと思う?【赤司】
1ページ/2ページ
「るう、どうして僕を避けるんだい?」
休み時間になり、トイレに行くだけだというのに周囲をうかがい、周囲の人の流れに合わせるようにタイミングを計って廊下に出た途端、目の前でにっこりと笑いながら通せんぼをしているのは校内の有名人、赤司征十郎君です。
整った顔立ち、気品に満ちた振舞い、頭脳明晰、運動神経および人身掌握にも優れたパーフェクトな人物です。
「別に避けてなんてないデスヨ?」
とりあえずトイレに行こうと思っていることを汲みとっていただきたいとは思ってますが。
「そうかな? 僕が声をかけようとすると目を反らすじゃないか」
「そんなことないよ。気のせいじゃない?」
とりあえずすっとぼけてみました。
「僕に逆らうのかい?」
「とんでもないよ。征十郎の言うことは『絶対』なんでしょ?」
「そうだよ。ではなぜ避けているのかの理由を聞こうか。るうの行動はすべて見えているといっても過言ではないんだよ」
そうでした。流石はエンペラーアイ。でもそういう風に使うのはどうかと思うんですが……。
「大方、そんな風にエンペラーアイを使うな、とでも考えているんだろう」
ぐっ!! なぜそのことがわかるんですか!?
「ほらね。るうはすぐに顔にでるからわかりやすいね」
いぢめ? ワタシは征十郎にいぢめられているのでしょうか。
嗚呼、それにしてもそろそろ休み時間終わりなんですけど……。
「僕はるうの彼氏なんだよ。本来ならば僕たちが別のクラスに分けられていること自体が許せないんだ。でも、るうが現状で我慢するという健気なことを言うから我慢しているんだよ」
本気でクラス替えとかしそうだから、そんなことをしようとしたら別れると言ってあるんです。
「なのに休み時間ごとに教室を訪れれば君は僕を避けようとする。僕のことが嫌いなのかい?」
わざとため息をつきながら『困ったもんだ』といわんばかりのジェスチャー。
「そんなことないよ?」
そう言うしかないよね。
そもそも、私の何が気に入ったのか、入学式典が終了して講堂を退室した瞬間に告白をされて早3か月。
告白の返事に『Yes』以外は受け付けないという強引なもので、呼び方は『征十郎』と呼ぶように指示された。
困惑する私に対して、気楽な友人としてからでいいから、という一言で交際に至った訳だけど。
いわゆるデートというものをしたことは2回。
私が知る『デート』は待ち合わせをして映画を観てス○バとかでお茶するとかなんだけど、征十郎の基準はハンパなかった。
約束の当日、家までに黒塗りのハイヤーが迎えに来て、『お茶でも飲みに行こう』という一言で湾岸のビルのスカイラウンジ連れて行かれた。
『映画』は映画館のVIPルームだし、『食事』だとすぐ横でシェフがライブクッキングしてくれるようなところに連れて行かれる。
しかもその2回のデートで訪れた場所はすべて貸切。いくら私が物知らずでも、休日の有名スポットが何もしないで無人だなんて思わないわよ。
……一般庶民の私としてはどう受け止めていいやらです。
「ねえ征十郎」
「何だい」
「とりあえず私を通してくれない? もうすぐ休み時間が終わっちゃうから」
そう。まずはトイレに行かせていただきましょう。
「もうすぐ僕にとっては死刑宣告も同じ時間が来てしまう。悲しいよ、るう」
いや、私の都合なんですけど。
こういうときの征十郎はダダをこねる赤ん坊よりも面倒くさい。
「とりあえず手を洗いに行きたいと思ってるから通して?」
「じゃあ僕もついていくよ」
いや絶対にやめてほしいんだけど。
ってか、女子トイレの前で征十郎が立ってたら変態扱いですけど?
「えっ!? 手を洗いに行くんだよ。トイレまでついてくるの?」
あえて目的地を明確にお伝えしてみました。普通なら遠慮するだろう。
しかし彼は普通じゃなかったです。
「校内であってもどんな事故に巻き込まるかわからないだろ。るうを一人そんな危険にさらすわけにはいかないよ」
いや、本気なんですか?
……そのきらきらとした瞳は本気なんですね。本心からそう言っているわけですね。
もうため息しか出てきません。