krkの籠球 2

□どんなのがいい?【誠凛バスケットボーイズ】
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発端は部室に届いた一通のラブレター。



宛名は『素敵なバスケットプレーヤー様』。内容をかいつまむと『練習試合などをよく見ている』『シュートする姿が素敵』『体育館での練習を見たことがある』らしい。

そして、特筆すべきなのは『プレーをしているときの凛々しい顔も好きだけど、休憩になったときの柔らかい表情にキュンときました』だ。

このラブレターを発見したのは黒子。
朝練のあと、1時限目の終わりに忘れ物を取りに部室へ戻った彼がドアに挟まれていたのを発見したのだ。

発見はしたが宛名があいまいだ。
とりあえず相棒である火神に話し、主将である日向へ伝えたところ、内容を検証しようと昼休みに部室へ呼び出されたのだ。部室では日向はもちろんだが、木吉もまっていた。

「まず検証すべきは宛名だ。この手紙以外に何か手がかりはなかったのか」

「僕が見つけたときに人影はありませんでした」
「同時刻だったら黒子に見つからずに手紙を置くことは不可能に近い」
「できるとしたら黒子レベルの影の薄い人物だ」

確かにそうである。

「誰宛なのかはひとまず保留だ。ならば、次なる問題は『誰から』なのか、だ」
「ウッス」

「内容からするとたびたびバスケ部に関連している人物だと思われる。だが、練習中に体育館の中へ入ってきた人物は皆無だ」
「ダァホ。練習は一度だけかもしんねぇぞ。しかも体育館の中じゃなくて外とか、外からとか。いろいろあんだろが」
「なるほど。それは思いつきませんでした」

「この文面から察するに、控えめな性格なんだろう。そのせいで相手も、自分も名前を書くことができなかった」
「そうなんでしょうか。いえ、そもそも控えめであるなら手紙を出すことも躊躇するのでは?」
「気持ちがあふれてしまって告白するつもりだったのかもしれんぞ」

「「「告白!!?」」」

どいつもこいつも所詮は高校男子。普段は大きな声では吹聴しないが、彼女が欲しいとか、そういう経験をしてみたいと思うお年頃なのである。

「『シュート』がキーワードだな。ゴール下の攻防というのは鬼気としているものが多いが、休憩の柔和な態度と言えば俺だろう。きっと可愛い子だ」」
「ダァホ! この俺のスリーを見て惚れてんだよ。可愛いっていうのは賛同する。女の子らしいサラサラヘアの子に決まってる」

そう木吉と日向が自分だと主張した。

「ちょちょちょ待ってくれ……です。シュートと言えば俺っすよね?」

確かに豪快なダンクを決める自分が外されるわけがない。

「待ってください。この手紙には一文字も『シュートを決めた』とは書かれていないですよね。だから僕も可能性があります」

基本シュートを打たない自分が部外者となってはたまらない。

黒子の言い分を通すなら、この4人は誰もが条件に当てはまるのだ。
ああだ、こうだと結論の出ない論議を交わす4名。

予鈴が響き、昼休みはもうすぐ終わるが論争はいつまでも終わる気配はなく、それどころか日向と木吉は自分の好みのタイプを力説し始める始末。
どうやら二人ともスタイルの良い(木吉は「胸が桐皇の桃井ぐらいあれば、見るもよし、触るもよし、顔をうずめるもよし!」とまで言っていて、さすがにそれについては黒子が不機嫌になっていた)女性が好きらしい。
何とも贅沢なことである。

火神と黒子だっておとなしく控えめな女性が好きだ。まあ、オプションとしてその人が可愛くてスタイルが良ければ(グラマーであるとか)というのは歓迎すべき内容である。口には出さないけど。
こんな馬鹿談義をドアの前で聞いている人物がいた。しかも二人。


二人は中の4人に聞こえないよう、小声で情報交換をしている。

「ふんっ。やっぱりウチの男どものレベルはこんなものね。るうちゃん、うかつにアピールすると食べられちゃうわよ。バスケしてるときはまあままなんだけどねぇ」
「そ、そんなこと言っちゃ可哀想だよ、リコちゃん」
「でも、差出宛先不明のラブレターで全員自分だって妄想しちゃうぐらいだけど?」
「うっ、それはそうだけど……。でも火神くんかっこいいのに……」
「ええっ、火神くんなの!?」
「言ったじゃん! もう」
(なんだ、日向くんだと思って牽制しようとしちゃったわよ)


手紙はカントクが書いた偽物。ちなみに、元データはあのウシ乳小娘よ。
それがちょっと面白くないから、あいつら4名は二倍メニューね。

ムカつきつつも、ちょっとスキップしたくなる気分でそっとその場を離れたのでありました。

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