krkの籠球 2
□どんなのがいい? 【陽泉バスケットボーイズ】
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それは部室にあった一冊のグラビア雑誌から始まった。
「おおぉぉぉぉぉっ!!!」
「こっ、これはっ!!」
「誰が置いたアル!?」
ここは陽泉高校男子バスケットボール部の部室。
ある日、朝練のため早朝に登校した福井により、本来あるはずのないものが部室内のベンチに鎮座していた。
そこにあったのはコンビニなどでの『成人コーナー』で販売されている一冊のグラビア雑誌。
それもちょっぴり過激なほうに分類されるレベルなもののようだ。
「これは福井のアルか?」
「劉、お前『アル』の使い方が完璧だな。ちげーよ、さすがの俺でもこの手の本は持ち歩かねぇし」
劉は福井が持ち主だろうと予想していたようだ。これは、福井の日頃の行いによって導き出された答えだ。
そして福井の答えは微妙だ。『さすがの俺でもこの手の本は』と言ってしまっている。ではどんなものは持ち歩いているのだろうか。
「じゃあアゴリラのアルか?」
「なんじゃい! ワシはアゴリラじゃないぞっていうか、そ、そんなモン部室になんぞ持ってこんがな」
次に主将の岡村……通称アゴリラに水を向けた。顔を耳まで真っ赤に染めて全力否定の体制。
「自分のでもないアル。じゃあ誰の忘れ物アル?」
これには三人とも首をひねってしまった。残念なことにこの三人には身に覚えがないのである。
「それにしても、なかなかに刺激的なヤツじゃん。おっ。これは好みかも」
福井が数ページめくったところのグラビアを指さした。
「うぉぉぉお!! 刺激的じゃぁ!」
「へー。福井サンはこういう女性が好みアルか?」
「顔はあんま気にしたことねぇな。まあ出るとこ出てるほうがいいじゃん。気持ちイイし。そういう劉はどうだ?」
今度は劉に本を渡した。
「俺はこの子がいいアル」
「結構細身が好みなんだな」
「あまり胸が大きいとウシみたいで好きじゃないアル。この子は美人。やっぱり美人がいいアル」
「ネコ目系か。なるほどな」
二人で雑誌をペラペラとめくりながら、この子が良いだの、こっちのほうが良いだのと話している。
「ワ、ワシは?」
一人蚊帳の外となってしまっていた岡村が恐る恐るという体で声を発した。
「ゴリラのメスは載ってねぇぞ」
「ワシ、ゴリラじゃないけど?」
「ってか、アゴリラは女なら誰でも良いアル。それにこの中の誰もアゴリラに興味ないアル」
「ワシ泣きそう……」