薄桜鬼_現代 主は小説家

□紅葉狩り4 山は彩りゆたかでした。うん
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ふもとから計って約一時間。ようやく薬王院まで到着しました。

「やっと着きました」
「おいおい。半分以上ケーブルカーで移動してたのにもうぐったりか?」
「うぅぅ。そう言われましても普段が普段ですから……」

目的地に到着した!と思う私は達成感と疲労感がダブルで押し寄せてきまして、かなりぐったりとしていたのでしょうか。原田さんが呆れたような声。すいません……普段が完全インドアなもので。

「じゃあさ、今度一緒に体力づくりも兼ねて汗流しに行こうよ。近くにいい道場がるからさ」
「ど、道場ですか!? 私の人生で最も縁がないと思ってた場所なんですけど?」
「そっかー。じゃあ逆にこれで『縁』ができたから一緒に行けるね」

ニコニコ顔の平助君ですが、そこは『行く』のではなく『そっか、残念だね』と言うべきところですよ!?

「平助落ち着け。立浪さんが困惑している」
「えっ? そうなの?」

齋藤さんの一言に心は高速でうなづいてるんですよ。
ただ、齋藤さんの助け舟に乗っかりたいけど、『拾ってください』的な子犬の眼差しでこっちを見ている平助君を無下にするには私の修行が足らな過ぎます。

「うっ。……じゃ…あ今度また時間があったときにくわしく……」
「やった。じゃあ今度細かいことを話そうな!」

そんな疑いを爪の先ほども持ってませんっていう顔でこっちみないでよぉ。薄汚れた大人には眩しすぎます。
原田さんと斎藤さんは苦笑い。

ええ、そんな目で見なくても、私は推しも意思も弱いって知ってますよ。
だけど、ああいう目で見られたら他に何て言ってお断りするんですか? そこをぜひ知りたいです。


「見てるうさん! 山がすごいよ」

平助君が薬王院のちょっと上を指さしながら言った方を見る。

うわぁぁぁ。
さっきまで『通ってきた道』だけを見てた(谷側は怖くてみられなかった)から針葉樹ばっかり目についたけど、薬王院の屋根を見上げるように見ると院の背後に見事な彩り。

「すごいねー、きれいだねー!」
「なー、来てよかっただろ」
「うんうん!」

キャッキャとはしゃぐ私と平助君。
それを保護者視線で見守る二人。

あれ? 斎藤さんって私よりも年下じゃなかったでしたっけ? なんで保護者視点?
まあいいや。
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