薄桜鬼_現代 主は小説家

□ご近所さん、よろしくお願いします 沖田編
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ここはるうちゃんが越してくる一年ほど前に建った。
新築時から住んでいるのは僕、土方さん、平助、一君で、左之さんはその半年後ぐらいに越してきたんだ。

オーナーが皆の共通の知り合いだってこともあって、完成前から住む話になっていたけど、どの部屋に住むか、という点については引っ越し直前まで決まらなかったんだよね。

締切に追われてるっていう土方さんがなかなか決めてくれないんだよ。
仕事で忙しいから待て、だなんて勝手な理由で決めてくれないんだよ。こういうのって困るよね。
だって僕、土方さんの真下の部屋にだけは住むの嫌だったからさ。
え? 何でかって?
意味もなく毎日毎瞬足蹴にされてるみたいで嫌じゃない? なんとなく腹が立たない? 

うん、普通は『そこまで考えなかった』って言われるだろうけど、僕は土方さんにだけはぜ――――――――――ったいに真上に住まれたくないんだ。

こだわりすぎだって? 
まあそうかもしれないけど、これは譲らないよ。

僕の引っ越し予定日の3日前にようやく土方さんの部屋が決まって、その流れで僕の部屋も決まった。

土方さんの真上! 毎日僕が足蹴にしてあげるね。楽器の練習もできるほど防音は完璧みたいだから床音はしないだろうけどさ。

最上階っていうのもいいね。屋上以外の誰にも僕は足蹴にされないってことで。

この新しい環境を僕はとても気に入ったよ。

特に荷物も多くなく、引っ越しはあっという間に終わってしまったし、入居しても特に出勤とかするわけじゃないから僕の生活はあまり変わらない。

ちょっと、『出勤』しないからって僕の職業を一方的に決めつけてない? 無職って。

そんなにあくせくと働く気なんてさらさらないけど一応仕事してるよ。デイトレダーなんだ。

ただ毎日ちゃんとやるわけじゃないけど、さほど損をしてないってのは才能があるってことかもね。


防音がしっかりしてるから床下の音は全く聞こえないけど、静かになった夜とかに土方さんと不知火サンの怒声のまじったやり取りが聞こえてくるときがある。
なかなか興味深い内容だったりすることもあるから、気が向いたときは耳をそばだてたりする。

引っ越してきてから数度、顔を合わせているけど土方さんも平助も一君も僕と適当な距離を保ってくれている。
おかげで結構生活が楽でいい。

*****

このマンションに女の子が入居してきた。土方さんのいる部屋の隣室に入慮したらしい。
彼女の存在は初日からわかっていたよ。だって、昼寝をしていたら階下からすざまじい雄叫びが聞こえたんだよね。

あの土方さんが女性に一方的に怒られるところなんて、そうそう見られるものじゃないよね。
そーっとベランダに設置されている非常用梯子を利用してベランダ越しに部屋を探る。

ついにヘビースモーカーが原因で怒られてるよ。
まあ真面目な土方さんに限ってはないと思ってはいるけど、ボヤとか出される前にお灸をすえてもらえてよかったかな。
とりあえず明日なんか言っておこうか。


……しかし、土方さんが食事に誘ったりなんかしちゃってるんだけど。
『お礼』とか言ってるけど、あの土方さんが強引に『明日18:00』って約束させてるところを見ると、結構好みで押せ押せってことなんだと思うんだよね。無意識なんだろうけど。

僕に気づかないで帰ったみたいだけど、ふーん。なんか面白そうな子かもしれないな。

さて、土方さんが気づく前に梯子を上げちゃわないと、外されかねないからね。


*************

「おはよう、るうちゃん」
「??? お、おはようございます」

彼女がコンビニにでも行く軽装で出かけたからタイミングを合わせて1Fのエントランス横のオブジェに座って待ってみた。
待ち伏せ? 人聞きが悪いなぁ。挨拶のために待ってただけだよ。

「あ、の……」
「ああ、僕は総司。沖田総司だよ。君の部屋の隣の上に住んでるんだ。よろしくね」

有無を言わせないように一息で言い切り、にっこりと愛想笑い。
彼女もつられて笑いつつ、「よろしくお願いします。立浪るうです」だってあいさつされた。

うん、いい笑顔だ。この先も僕の行動につられてくれるタイプみたいだし、これからもよろしくね。
なんか面白いことに参加してくれそうだよね。楽しみだな。


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(何だかネコみたいな人だったな。……あれ? なんだろうちょっと背中に悪寒が…ゾクッときた)







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会社に行く総司君のイメージがなかったのでこんなことに。
お金とかに執着がない人ってイメージなんですけど……アリですか?

この先女主ちゃんは土方さんへのイタズラに巻き込まれてくれたら面白いのに……。

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