krkの籠球
□街角にて_自動販売機【緑間】
1ページ/2ページ
「最近は自動販売機も種類が増えてるわねぇ」
ハーフタイムになって、同行した高尾が周囲の女生徒に話しかけられ、騒々しくなってきたので席を立って自動販売機まで来た。席近くの販売機は2台しか設置されていなかったためか目的のものがなく、場内案内図に記載のあったもう一か所まで来たのだよ。
そこで聞いたことのある口調が聞こえた。
赤司の現チームメイトである実渕なのだよ。
自分らが出場しないとはいえ、試合会場に来ているのは良しとするのだが、こんなところで鉢合わせするとは思ってもみなかったのだよ。
彼も近くにいた女生徒と話をしていたのだよ。まあ、高尾と違ってナンパ口調でないのが救いだ。
チームジャージを着ていない私服とはいえ、あの身長で一般人とは言い難い。まあ確かに見た目、口調、仕草からすればバスケ選手とは思えないのは無理はない。
女生徒の去ったのちもまだ思案しているようだったので声をかけた。
「すまないが、まだ考えているのであれば先に購入してもよいだろうか」
実渕が振り返り、ちょっと驚いたように目を見開いた。この様子だと俺のことを知っているのだろう。
「ええどうぞ。ごめんなさいね、時間かかっちゃってて」
「それは構わないのだよ」
7台並んでいる販売機の一つに目的の商品はあった。
俺は必要な小銭を投入し、『つめた〜い』にあるほうを購入し、取り出し口に手を入れる際に背後から視線を感じた。
「何なのだよ」
やや不機嫌な口調で声をかけてしまった。
「えっと、それって『お汁粉』よね」
「ああ。ここにそう書いてあるが」
「この季節に暑くない? ああ、ごめんなさいね。熱いお汁粉がこの季節にあるなんて思ってもなかったから」
「ふっ。この季節ならでは冷たい商品もあるのだよ」
馬鹿め。お汁粉が年間を通して温かい飲料に分類されるとは限らないのだよ。
実渕は鳩が豆鉄砲をくらったような視線でこちらを見ている。
ああ、いかん。このようなところで時間を浪費するわけにはいけないのだよ。
「先に申し訳なかったな。礼を言うのだよ」
とりあえず、礼を言って失礼する。
「そんなのいいのよ。こっちはまだ考え中だから。じゃあまたね、秀徳の緑間くん。試合で会いましょ」
「ああ」
やはり知っていたのだな。
さすがは今日のおは朝。『ラッキーアイテムは眼鏡。思わぬところでライバルとも言える知人と会うでしょう』だ。