真波くんと自転車ダイエット
□13 告白
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「大丈夫?」
座りこんでしまった七海に差し出された腕の先にある真波の顔を、七海は呆然と見上げた。まぢかで見ると真波の顔は本当に綺麗だ。大きな瞳は、青いんじゃないかと思えるくらい澄んでいる。
友達が好きな子のことを好きになれるはずがない。七海は長い間、委員長の真波に対する想いを側で見てきたのだ。いつか友達の想いが報われればいいと考えながら。
だいたい、真波は七海のなにを見て好きだと言っているのだろう?信じられない。いつも女子にキャアキャア言われて、満更でもなさそうなのに。女好きだっていわれてるモテ男が。
今、どうしたら良いのか。頭がパニックになって言葉が出てこない。「好き」と言われたことが聞き違いじゃないかと七海の思考は現実逃避を始めたが、それはすぐに現実に引き戻された。
「ごめん、びっくりさせて。……オレ、気持ちが伝わってないって全然気付いてなくて……。けど、そっかぁ」
床にしゃがみこんでしまった七海の前に、真波が方ひざを付いて視線を合わせてきたのだ。
「わかった。倉林さんがイヤならもう誘わない。でも、自転車はそのまま使って。返されてもウチ、誰も乗らないし。……倉林さんが乗らないなら、弟くんにあげればいいよ」
「でも……」
「ほら、もう立って!早く帰りたいんでしょ?」
真波は七海の手を引いて、立ち上がらせた。
「ねぇ、オレが倉林さんと付き合いたい、オレの彼女になってって言ったら……」
七海は首を横に振った。真波につかまれたままの手があつい。
「だよね。オレのこと嫌い?……でもないよね。嫌いだったら家に入れてくれるはずないし」
いつもはユルい空気をまとっている真波の真剣なまなざしから逃れたくて、七海は真波の手を振りほどこうとからだをひねった。と、逆に引き寄せられ、抱き締められる格好になってしまった。
「ま、真波くん、ちょっと、離して……」
「ごめん、でも覚えておいて、真波山岳は倉林七海が好きだって」
そう言ってするりと七海を放すと、真波は部屋を出ていった。「今日は送れない。自転車は勝手に出して」と言いおいて。
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